ガーナを寄付で支援する|国の現状と問題、日本の支援事例を解説
- 参加
- #ガーナ
- #参加
この記事でわかること
ワールド・ビジョンはガーナで、女性へのマイクロファイナンス支援や教育プログラム「アンロック・リテラシー」を展開。小規模ローンで生計向上を促し、子どもたちには批判的思考を育む教育を実施。これらは月額4,500円のチャイルド・スポンサーシップで支えられています。
西アフリカのガーナは、チョコレートなどの原料となるカカオ豆の産地として有名です。このため、ガーナという国名は、日本にいる私たちにとっても比較的なじみのあるものではないでしょうか。
この記事では、そんなガーナの現状や抱えている問題を解説し、ガーナに対する日本の支援事例を詳しく紹介します。ガーナの人々のために、日本からの寄付を通してどんなことができるのか、ぜひ考えるきっかけにしてください。
ガーナの現状と寄付で取り組むべき問題

まずは、ガーナが現在どんな状況にあるのかをさまざまな指標から把握し、寄付を含む国際的な支援を通して解決することが望まれるガーナの諸問題について知りましょう。
ガーナの現状:主要産業や人々の生活
ガーナでは、選挙による政権交代が平和裏に実現しており、アフリカの国家としては政治的にも社会的にも安定していると評価されています(注1)。
さらに、経済面でもガーナは急速な成長を続けています。世界銀行によると、新型コロナウイルス感染症が流行する前の2017年から2019年には、ガーナは7%という高い経済成長率を記録していました。2020年には、都市封鎖の影響などもあって経済成長率は0.4%に落ち込みましたが、2021年には4.1%に回復したと推定されています(注2)。
そんなガーナの経済を支える主要産業は、カカオ豆生産を中心とする農業、そして貴金属や石油を含む鉱業です。主な輸出品目は金、石油、カカオ豆、ナッツ類などで、典型的な一次産品依存型の経済であると言えます(注3)。
ガーナの生活水準をイメージするために、1人当たり国内総生産(GDP)を他国と比較してみましょう。1人当たりGDPは、国内総生産を人口で割ったもので、各国の平均的な経済的豊かさを示す尺度として広く用いられています。2020年のデータが公表されている242の国・地域のうち、ガーナの1人当たりGDPは低い方から数えて65番目でした(注4のデータから計算)。
一方、世界銀行が定める国際貧困ラインである1日1.9ドルという水準以下で生活している人の割合は、ガーナでは2016年時点で12.7%でした(注5)。極端な貧困がまん延しているというわけではありませんが、世界的に見ればまだまだ経済発展の余地があると言えそうです。
寄付で解決を支援すべきガーナの問題
1人当たりGDPの水準が上がったことで、現在ガーナは世界銀行の4類型で下から2番目の「低中所得国」に分類されています。しかしながら、多額の公的債務を抱えていることも事実であり、若年層の雇用なども課題として指摘されています(注6)。
さらに、ガーナの主要産業であるカカオ豆の生産に目を向けると、児童労働や貧困の連鎖といった問題も見えてくるでしょう。日本の私たちにとっては驚くべき割合ですが、ガーナでは子どもたちの実に5人に1人が、児童労働に従事していると言われています(注7)。
カカオ豆を出荷するまでにはさまざまな工程が存在するため、多くの労働力が必要です。このため、貧しさゆえに大人を雇えないカカオ農家では、子どもたちが重要な労働力として駆り出されることになります。このようにして、働くために学校に通えず、教育を受けられない子どもたちがそのまま大人になると、貧困の連鎖へと陥ってしまうことが懸念されます(注7)。
ガーナへの寄付などを通した日本の支援

それでは、日本はガーナに対してどんな支援を行っているのでしょうか。ここでは、日本政府が主導する支援事業や、寄付を通して誰もが貢献できるプログラムなど、実際の支援事例を2つご紹介します。
ガーナでのカカオ生産に対する官民連携の支援
日本の政府開発援助(ODA)を担う独立行政法人国際協力機構(JICA)は、2020年に「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を立ち上げました。このプラットフォームは、「JICAだけでできることは限られている」という認識のもと、産業界や市民社会のさまざまな組織が参加し、官民連携でともに課題を解決していくために設立されました(注7)。
2022年3月時点で、このプラットフォームには、広告代理店、コンサルティング会社、NGOなどを含む42の団体が参加しています(注8)。持続可能なカカオ産業の実現を目指して、イベント開催やメールマガジンの配信などを行っているほか、会員が集まる定期フォーラムなども開催しています(注9)。
また、このプラットフォームに参加している企業が、独自にガーナ向けの寄付プログラムを展開している例もあります。
ガーナのスラムを対象にした寄付プログラム
ガーナで貧困に苦しんでいるのは、カカオ農家の人々だけではありません。ガーナにはスラム化した電子機器の廃棄場が存在します。そして、ここに廃棄された電子機器から金属を回収し、それをお金に換えることを仕事としている人々がいます。
金属だけを取り出すために、彼らは電子機器をたたき割り、さらに絶縁材料のプラスチックを燃やして溶かします。電子機器を燃やすときに発生する煙には毒性があるとされ、実際にこの廃棄場の周辺で集めたニワトリの卵が高濃度の有毒物質で汚染されていたという報告もあるほどです(注10)。
この現状に心を痛めた日本の美術家・長坂真護氏は、この廃棄場で集めた廃材を使って美術作品を製作し、売上を現地に還元する活動を行っています(注11)。そして、日本で暮らす私たちは、意外な方法でこの活動を支援できます。
世界でソーシャルビジネスを展開する株式会社ボーダレス・ジャパンは、自然エネルギー由来の電気を供給するサービス「ハチドリ電力」を提供しています。このサービスを利用すると、電気料金の1%がNPOなどに寄付される仕組みになっており、利用者は気軽に社会活動に貢献できます。
上述した長坂真護氏も支援先の1つに指定されているため、私たちはこのサービスの利用により、ガーナのスラムで過酷な生活を強いられている人々を支援することができるのです(注12)。
寄付を通したワールド・ビジョンのガーナ支援

ガーナ向けの寄付プログラムは、上で紹介したほかにもいろいろありますが、私たちワールド・ビジョンも、ガーナでさまざまな支援活動を展開しています。ここでは、ワールド・ビジョンによるガーナでの支援事業のうち、代表的なものを2つご紹介します。
ガーナでのマイクロファイナンスを通した生計支援
ワールド・ビジョンは、人々が貧困を解決し自立することを目的に、小規模ローンの貸し付けを行う金融組織「ビジョン・ファンド」を2003年に設立しました。ビジョン・ファンドによる貸し付けの原資は、ワールド・ビジョンから支援されています。
ビジョン・ファンドのガーナにおける下部組織「ビジョン・ファンド・ガーナ」は、地方の貧しい地域で、主に女性を対象として、マイクロファイナンスなどのサービスを提供しています。
ビジョン・ファンド・ガーナのローンを利用したアッタさんは、長年ココナッツオイルを生産していますが、7人の子を持つシングルマザーです。アッタさんたち家族の生活に余裕はなく、子どもたちを公立の学校に行かせることしかできませんでした。
しかし、ビジョン・ファンド・ガーナのローンを借りたことで、3年後にはココナッツオイルの生産量が増加しました。そのおかげで収入が上がり、今では子どもたちを私立の学校に通学させるだけでなく、一番上の子を大学に通わせることもできているそうです。
ビジョン・ファンドはこのように世界中の人々の人生に変化をもたらしています。さらに新型コロナウイルス感染症の大流行に際して、生計が厳しくなった世帯を対象にした融資も行っています。2022年1月時点で世界28カ国で展開中です。新型コロナウイルス感染症への緊急対応を始めてからの2年間で、ビジョン・ファンドは、子どものケアを目的に合計1億7,453万8,307ドルの資金を貸し出しました。
ユネスコ/日本ESD賞を受賞したガーナでの教育プログラム
ガーナでのワールド・ビジョンの活動の1つに、持続可能な開発のための教育(ESD)に取り組む組織が実施する優れたプロジェクトに贈られる「ユネスコ/日本ESD賞」を受賞した「アンロック・リテラシー」という教育プログラムがあります。
ワールド・ビジョン・ガーナが行っているアンロック・リテラシーは、批判的思考能力に焦点を当てたプログラムです。初等教育を受けている子どもたちが、地域の課題について批判的に考え行動を起こせるように促すことなどを目指し、ガーナ全土で合計210カ所の学校やコミュニティで、このプログラムを展開しています。
2021年のユネスコ/日本ESD賞受賞に際しては、113件もの候補案件の中から、わずか3団体の受賞者の1つに選ばれました(注13)。コミュニティ全体を巻き込み、行動志向かつ仲間同士でお互いから学ぶアプローチが評価されたようです。
ワールド・ビジョンの支援にご協力をお願いします

ワールド・ビジョンは、ガーナを含む世界中の子どもたちに、さまざまな形で支援を届けています。その活動を支えているのが、チャイルド・スポンサーシップを通した支援者の皆さまからの寄付です。
チャイルド・スポンサーシップは、月々4,500円、1日当たり150円の継続支援です。
チャイルド・スポンサーになっていただいた方には、支援地域に住む子ども、”チャイルド”をご紹介します。支援金はチャイルドやその家族に直接手渡されるものではなく、子どもの人生に変化をもたらすことを目指した、さまざまな長期の支援活動に使われます。
チャイルドは、皆さまと1 対1の関係を育み、支えられていく存在です。支援地域がどのように発展し、チャイルドがそこでどのように成長しているかという支援の成果を、毎年お送りする「プログラム近況報告」と、チャイルドの「成長報告」を通じて実感していただけます。
子どもたちが皆ひとしく健康で安全な環境で育ち、教育の機会を得て未来に夢を描けるように、チャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。
ワールド・ビジョンの活動にご関心を持っていただけた方は、ぜひメールマガジンに登録ください。月に1回、お届けします。
参考資料
注1 JICA:ガーナ
注2 世界銀行:Ghana – Overview
注3 外務省:ガーナ共和国 基礎データ
注4 世界銀行:GDP per capita (current US$)
注5 世界銀行:Ghana
注6 外務省:対ガーナ共和国 国別開発協力方針
注7 JICA:児童労働のないカカオのために
注8 JICA:「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」会員一覧
注9 JICA:開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム
注10 産経新聞:わたしたちが捨てたガジェットは「電子ごみ」になり、途上国の人々の健康を害している
注11 MAGO GALLERY
注12 PR TIMES:電気料金の1%がNPOなどの支援につながる「ハチドリ電力」4月17日よりサービス受付開始
注13 文部科学省:2021年ユネスコ/日本ESD賞受賞者の発表について
SHARE
この記事が気に入ったらシェアをお願いします

