アフリカの学校給食の現状とは?メニューや食糧支援の事例を紹介します

投稿日|2025年3月27日
更新日|2025年3月31日
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この記事でわかること

アフリカでは飢餓が深刻で、学校給食は子どもの栄養と成長に不可欠です。給食は就学を後押しし、児童労働や早婚を防ぎ、学習意欲も高めます。新型コロナの影響で給食を受けられない子どもが増え、支援の継続が重要です。

アフリカは、世界のなかでも栄養不足や飢餓に苦しむ人びとが多い地域です。特に立場の弱い子どもは、貧困や天災、紛争などによる影響を大きく受けてしまいます。こうした子どもたちの成長に欠かせないのが、学校給食です。

学校給食は、家で十分な食事を摂れない子どもたちの栄養バランスをサポートし、健やかな成長を促します。そこで本記事では、アフリカの学校給食について解説します。アフリカに住む子どもたちの現状を知り、私たちワールド・ビジョンと一緒にできることを考えていきましょう。

アフリカの給食の現状と背景

給食を食べる南スーダンの子どもたち
給食を食べる南スーダンの子どもたち

2022年に国連児童基金(ユニセフ)や世界保健機関(WHO)から共同発表された統計によれば、世界で約31億人もの人が十分な食事にアクセスできていないとあります(注1-序章)。ではそのなかで、アフリカの現状はどのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

アフリカでは約20%以上の人が飢餓に直面

2021 年、アフリカではおよそ2億7,800 万人もの人が飢餓に直面しています(注1-2章)。これはアフリカに住む約12億人のうち、20%以上を占める数字です。つまり5人に1人以上が、飢餓に苦しんでいることになります。

2020年初頭から学校給食を食べられなくなった子どもが増加

アフリカではこれまで、国家単位で学校給食を普及する政策に取り組んできました。事実、2019 年にはアフリカ全土で6,500万人以上の子どもたちに学校給食が提供されるようになっています。2013 年時点の3,840万人と比較すると、大きな進歩です。

しかし2020年初頭から、新型コロナウイルス感染症が拡大。感染拡大を防ぐために、アフリカでも多くの学校が閉鎖されました。その結果、ほとんどの子どもが学校給食を食べられない状況になってしまったのです(注2)。

これにより、成長に十分な栄養が摂れず、飢餓に苦しむ子どもが増加しました。アフリカ政府は2023年までに7,300 万人の子どもたちに学校給食を提供することを目標としていますが、課題が多い状況です(注2)。

アフリカにおける給食の重要性

給食を食べるケニアの子どもたち
給食を食べるケニアの子どもたち

アフリカの子どもたちにとっての給食は、「成長に必要な栄養を摂る」という点で重要です。しかし、給食の重要性はそれだけではありません。ここからは、給食がもたらすメリットや変化について見ていきましょう。

バランスの良い給食メニューで健やかな成長を促す

アフリカではどの家庭もバランスの取れた十分な食事を摂れるわけではないため、給食が主な栄養源となっている子どもが多くいます。

なお南アフリカでは、パップと呼ばれる主食が多く食べられています。パップはとうもろこしの粉末と水を混ぜてこねたもので、ご飯を薄くしたような味が特徴的です。給食ではこのパップが人気ですが、お米やパン、パスタなどもあります(注3)。

またおかずは、豆類が中心(注4)。白いんげん豆をトマトで煮たスープや、豆を甘く煮たメニューなどがあります。ほかにもチキンの煮物や魚のスープ、野菜炒めなども食べられています。給食ではこうしたさまざまな食材が食べられるため、成長期の子どもたちにとっては欠かせません。

子どもたちの教育機会の拡大

学校給食は、子どもたちの教育機会を拡大・充実させる側面もあります。例えば、経済的な理由から子どもを学校へ行かせることに抵抗のある家庭にとって、子どもが無償で給食を食べることができれば各家庭での支出が減り、子どもを学校へ通わせようと思うきっかけになるかもしれません。

アフリカでは元々児童労働や女の子の強制的な結婚、早産などが問題となっていました。こうした問題に対して、学校給食があれば、子どもたちを労働や搾取から守り、適切な教育を受けさせることができるのです(注5)。

また、学校へ来てもおなかが空いていては授業に集中できません。学習効率が落ち、学んだことが頭に入ってこない子どもは少なくありません。しかし給食でお腹を満たせれば、勉強にも集中できます(注6)。

このように学校給食は、子どもたちに適切な教育を受けさせるために必要なものでもあるのです。

アフリカの経済成長を促す

学校給食は、将来的なアフリカの経済成長を促す効果もあります。例えば国連世界食糧計画(WFP)の学校給食プログラムで支給される給食にかかる費用は、貧しい家庭や弱い立場にいる家庭の収入の約10%を占めているのです。

つまり、学校給食が無償で提供されることで、貧しい家庭は世帯収入の約10%も節約できることになります(注5)。その結果、子どもたちに労働や早期結婚を強いるリスクも低くなる可能性があります。また子どもたちはしっかりと学校で学習する環境が整い、貧困の連鎖を断ち切れる可能性が高くなります。

給食をきっかけに学校に通えるようになった子どもたちが将来的に給与の高い仕事に就くことは、結果としてアフリカ経済成長の促進にもつながります。このように、学校給食は将来の国への投資にもなるといえます。

学校は、村や地域社会の中心的な場です。学校を中心にコミュニティが生まれることで、子どもを取り巻く地域社会全体のつながりがより強くなります。

学校は先生と子どものつながりだけでなく、先生と親、給食の調理師、給食の原材料になる野菜の農家、市場など、さまざまな結びつきを生みます。

アフリカの給食や食料支援の事例

ブルキナファソの学校における給食の支援活動の様子
ブルキナファソの学校における給食の支援活動の様子

アフリカで学校給食が十分に行き渡るには、まだまだ他国やほかの組織の支援が必要な状況です。そこでここからはアフリカの給食に対して、どのような支援が行われているのか見ていきましょう。

国連世界食糧計画のアフリカに対する食糧支援

まずはWFPの取り組みを見ていきましょう。WFPは緊急時に食料支援を通して命を救い、紛争や災害、気候変動の影響から立ち直りつつある人びとのために平和、安定、繁栄をサポートする人道支援機関です(注7)。

WFPは、これまで世界各国に学校給食支援を実施。2019年には、59カ国で1,730万人もの子どもたちに学校給食を提供しました。また65カ国3,900万人の子どもたちが、WFPの支援を通して、国の事業として学校給食の提供を受けています(注6)。

またWFPは最終的に、各国が支援を必要とせず、自立して給食を提供できるようになることを目標としています。この結果、1990年以降にWFPによる支援を終了し、独自で学校給食を実施している国はアフリカ諸国をはじめ44カ国にも上ります(注6)。

日本のアフリカに対する給食プログラム

日本でも、アフリカに対してさまざまなプログラムが発足しています。例えばJICAはアフリカの子どもたちの学習環境を向上させることを目的とした「みんなの学校プロジェクト」を2004年に発足しました(注8)。

教育だけでなく衛生管理や栄養面など、各地のニーズに合わせた課題を解決していくこのプロジェクトは、2021年時点で8カ国5万3000校にまで規模を拡大(注8)。JICAの隊員だけではなく、現地の保護者やおとなたちも一緒になり、子どもたちの健やかな成長をサポートしています。

例えばマダガスカルでは毎年12月〜3月頃に米の収穫が不安定になり、学校給食の供給が滞ることもしばしばです。そこでこの期間は、プロジェクトの関係者全員で必要な材料や調理のための人員を確保し、子どもたちに給食を提供しています(注8)。

ほかにも日本赤十字社や民間企業など、さまざまな組織がアフリカの学校給食支援プロジェクトを実施。日本国内での食事が、アフリカ諸国をはじめとする開発途上国への学校給食寄付になるプロジェクトもあります。

ワールド・ビジョンのアフリカに対する給食の支援活動

私たちワールド・ビジョンは国際NGOとして、支援の必要な国々に対し幅広い活動を実施しています。例えば2020年にはWFPと協働で、南スーダンの西エクアトリア州およびアッパーナイル州の1万9,980人の子どもたちに、149トンの持ち帰り給食を支援しました。

ワールド・ビジョンはもとよりこの地域で支援を実施しており、これまでで18万3,000人もの子どもたちの栄養状態が改善し、学校の出席率も向上したという実績があります。しかし、コロナ禍の学校閉鎖の影響で、子どもたちの栄養状態の悪化が懸念される状況に陥っています。

そこで給食に使用する食材を配布し、家庭で調理してもらう取り組みを開始しました。こうした取り組みを継続すれば子どもたちの栄養状態が改善されるだけでなく、食料を探すために遠くまで出掛ける必要もなくなります。子どもたちが危険な目に遭うことも防げるのです。

このようにワールド・ビジョンでは、アフリカ各地で給食の支援を実施しています。また、学校給食に限らず、教育環境や衛生環境の整備、安全な水の提供など、その土地のニーズに合った形で支援を実施し、子どもたちの将来をサポートしています。

アフリカの給食を寄付で支援しよう

ジンバブエの子どもたち
ジンバブエの子どもたち

ワールド・ビジョンでは、チャイルド・スポンサーシップという支援プログラムを実施しています。このプログラムでは1日150円、月4,500円を皆さまから寄付いただくことで、貧困や栄養不良に苦しむ子どもを継続的に支援します。

支援実績は報告書というだけでなく、支援した子どもからの手紙という形でも届きます。ご自身が支援した子どもの生活が変わっていく様子や、成長の様子を実感いただけるプログラムです。ぜひ私たちとともに、アフリカの子どもたちに栄養のある給食を届けましょう。

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