世界のワクチン接種状況と寄付方法 | 開発途上国の現状や課題も解説

投稿日|2025年3月27日
更新日|2025年7月30日
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この記事でわかること

多くの途上国では、経済的・地理的理由により予防接種を受けられない子どもがいます。2021年には2,500万人の子どもがワクチン未接種で、年間150万人が命を落としています。寄付により、命を守るワクチンを届ける支援が可能です。私たちの行動が子どもたちの未来を変えます。

世界では、すでに安全で有効なワクチンがあるにもかかわらず、生まれた地域や家庭が貧しいため、予防接種を受けられない子どもが多くいます。日本ではワクチンがあるため軽視されている病気も、地域によっては命を脅かす病気になります。

国連児童基金(ユニセフ)は、2021年時点で5歳未満の子どもが年間500万人も死亡していると公表しています(注1)。特に出産直後の新生児は死亡リスクが高く、ほとんどの場合は予防可能な要因で亡くなっているのです。ワクチンが世界中に行き渡れば、こうした要因で死亡する子どもを減らせます。

そこで本記事では、世界のワクチン接種状況と、寄付の方法について解説します。ワクチンを取り巻く情勢を知りながら、私たちとともにできることを考えていきましょう。

子どもに必要なワクチンの種類

ワクチンを経口投与されるニジェールの子ども
ワクチンを経口投与されるニジェールの子ども

子どもはおとなに比べて免疫が弱く、さまざまな病気に感染するリスクがあります。例えば日本では、0〜5歳までの間に以下のようなワクチンの接種が推奨されています(注2)。

  • Hib(インフルエンザB型)
  • 肺炎球菌
  • A型肺炎
  • B型肝炎
  • ロタウイルス
  • DPT-IPV
  • BCG
  • 麻疹・風疹混合(MR)
  • 水痘
  • おたふくかぜ
  • 日本脳炎
  • 破傷風トキソイド
  • 髄膜炎菌
  • 黄熱
  • 狂犬病
  • 新型コロナウイルス 

上記は日本で代表的なワクチンですが、海外諸国でもこれらの病気は強い感染力で脅威となり得ます。世界保健機関(WHO)の発表によれば、1963 年に麻疹ワクチンが導入されてワクチン接種が広まるまでは、「はしか」が2~3年ごとに世界で大流行し、毎年推定 260 万人が麻疹で死亡していたとあります(注3)。

ワクチンが広まってからは死亡率も下がり、2000 年から 2018 年の18年間で推定 2,320 万人の死亡を防げたという報告もされています。しかし、依然として2018 年には 世界で およそ14 万人以上の5 歳未満の子どもが「はしか」で死亡しているのが実情です(注3)。

このように、インフラの未整備や、経済的な理由からワクチンの接種が広まっていない国は、いまだに少なくありません。

世界におけるワクチン接種状況

ワクチンを接種されるザンビアの子ども
ワクチンを接種されるザンビアの子ども

世界におけるワクチンの接種状況について見ていきましょう。

2021年には2,500万人もの子どもがワクチン未接種

WHOの報告によると、ここ数年子どものワクチン接種率はほとんど横ばいとなっており、2020年以降は減少している傾向にあります。この背景には新型コロナウイルス感染症の拡大が影響していると考えられます。

2020年初頭から起きた世界的なパンデミックにより、各国の医療システムに大きな負担がかかりました。そのため、ワクチンを受けられなかった子どもが多くなったのです。2021年には2,500万人もの子どもが必要なワクチンを受けられず、この人数は2019年から最多となりました(注4)。

またユニセフによると、ワクチンを接種できない子どもたちは経済的に貧しい国や、紛争の影響を受けている国に集中しているとあります。例えばワクチン未接種のうち、半数以上が以下の10カ国に住む子どもです(注5)。

  • インド
  • ナイジェリア
  • インドネシア
  • コンゴ民主共和国
  • エチオピア
  • フィリピン
  • ブラジル
  • パキスタン
  • アンゴラ
  • ミャンマー

ワクチン未接種の子どもは、主にアフリカや中東、東南アジアの開発途上国に集中していることが分かります。

年間150万人もの子どもがワクチン未接種で死亡

ワクチンの接種率が下がると、子どもだけでなくおとなの命も危険にさらされます。さらに社会全体に感染症がまん延すると、その国の医療システムに負荷がかかるだけでなく経済活動も停滞してしまう可能性があるのです。

こうした事態を防ぐために、世界では20種類を超えるワクチンが開発されています。WHOの報告によれば、ワクチンの接種によりジフテリアや破傷風、百日咳やはしかなどの病気から、毎年 350~500 万人の死亡を防いでいるとあります(注4)。

しかしユニセフの統計によると、依然として毎年150万人もの子どもがワクチンがあれば防げる病気で命を落としています。この人数は、20秒ごとに1人が命を落としているということです(注6)。また紛争の影響で、以前は当たり前だったワクチンの接種ができなくなってしまった国もあります。

数十円でも救える命がある

ワクチンは非常に高価なものなのかというと、必ずしもそうではありません。日本円にして数十円で購入できるワクチンは少なくないのです。ユニセフの募金ページを見てみると、ワクチンにかかる費用は以下のとおりです(注7)。

募金額購入できるもの1回あたりの単価
216円経口ポリオワクチン10回分21.6円
554円はしかの予防接種ワクチン10回分55.4円
3万円三種混合ワクチン1,223回分24.5円

このように、日本円に換算すると数十円で購入できるワクチンが多数あります。そのため、たとえ数十円や100円単位でも、ワクチンへの寄付は決して無駄になりません。またワクチンの普及には、使い捨ての注射針や保冷箱、ワクチンを保管しておく保冷室なども必要です。ワクチンへの寄付は必要に応じて、こうしたアイテムの購入にも使われます。

ワクチンを寄付する方法

ワクチンを接種されるウガンダの子ども
ワクチンを接種されるウガンダの子ども

ワクチンを寄付するには、主に以下の2種類の方法があります。

  • 服や使用済み切手などの不用品を寄付して、ワクチンに代えてもらう
  • 直接金銭を寄付する

ではそれぞれの方法について、見ていきましょう。

洋服など不用品を寄付して支援する

国際協力団体の中には不用品を回収し、それをお金に代えて開発途上国にワクチンを届ける活動をしている団体もあります。回収の対象となるのは、以下のようなアイテムです。

  • 古着
  • 使用済みの切手
  • 金券
  • 古本
  • CD・DVD
  • 服飾品
  • 携帯電話・スマートフォン
  • カメラ
  • ゲーム機 など

寄付する側としては、不要なものを処分できるうえにワクチンの寄付もでき、一石二鳥です。家にこうした不用品が多く眠っている場合は、検討してみるのも良いでしょう。ただし、こうした寄付の場合、該当の品物を集めたり梱包したりする手間が必要です。場合によっては送料がかかることもあります。

また寄付したものがいくら分のワクチンになり、何人の子どもたちに届けられたのかといった報告がない場合もあります。そのため、どちらかといえば不用品を処分するついでに寄付する、という傾向が強く、寄付に対する実感やモチベーションは感じにくいかもしれません。

金銭的な寄付で支援する

金銭的な寄付は、選択肢も多く確実な方法です。現在、数々の国際協力団体で金銭的な寄付が呼びかけられています。品物を寄付する方法とは違い、金銭を直接寄付することで「換金できなかった」という事態が発生しません。

また信頼できる団体を選びやすいのも、この寄付方法の特徴です。国際協力団体によっては、これまでの支援実績や事例を公式サイトで紹介しているところも少なくありません。私たちワールド・ビジョンも、その1つです。

さらに金銭的な寄付をすると、お金の使用目的やどのような結果に結びついたかを報告してくれるケースが多いです。例えばワールド・ビジョンでは、「チャイルド・スポンサーシップ」という支援プログラムに寄付していただいた方には、定期的な活動報告書のほか、支援対象となった子どもの成長の様子をお届けします。

これにより、離れた場所からでも自分が支援に携わっている実感や喜びを感じていただけます。

ワールド・ビジョンの取り組み

ワクチン接種を受ける南スーダンの子ども
ワクチン接種を受ける南スーダンの子ども

ワールド・ビジョンは、世界中の子どもたちが安全かつ健康に育つ社会を目指し、支援活動を行う国際NGOです。これまで開発途上国を中心とした36カ国で、169以上の支援事業を展開し、その地域の課題に寄り添い、長期的な目線で貧困や衛生面など、あらゆる問題を解決してきました。

中でも近年では、新型コロナウイルス感染症の緊急対応に尽力。世界70カ国以上で、最も弱い立場にある子どもたちやその家族への影響を軽減する活動を継続してきました。ワクチンの接種を支援することはもちろん、感染予防やワクチンそのものの重要性を地域の人々に伝える啓蒙活動にも力を入れています。

また石けんなど、予防に必要な物資の支援も積極的に行いました。こうした包括的な活動の結果、2021年10月までに7,201万2,019人(うち3,116万2,303人は子ども)に支援を届けることができました。

寄付で子どもたちにワクチンを届けよう

ワクチンを経口投与されるパプアニューギニアの子ども
ワクチンを経口投与されるパプアニューギニアの子ども

世界には依然として、防げるはずの病気で命を落とす子どもが多くいます。こうした子どもたちを救うには、その地域の保健サービスを整え、ワクチンをはじめとする必要な物資を提供する必要があります。

ワールド・ビジョンでは、「チャイルド・スポンサーシップ」という支援を通して、開発途上国の子どもたちが健康に成長できるよう、その地域に必要な保健サービスや物資を提供しています。チャイルド・スポンサーシップは1日150円、月4,500円の継続支援で、長期的な目線で対象の子どもや、その子を取り巻く環境の変化をご実感いただけます。

私たちの活動に賛同いただける場合は、ぜひ寄付にご協力いただけますと幸いです。

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