ジェンダー教育とは?課題・解決策・取り組みを詳しく解説
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この記事でわかること
ジェンダー教育は、性別に関わらず平等な権利と機会を提供することを目的としています。ジェンダー教育を通じて、性別に基づく差別を誰もが教育や社会で平なくし、暴力や偏見を減らし、より公平な社会の実現を目指します。
SDGs(持続可能な開発目標)の目標の一つとして「目標5.ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられたことも後押しとなり、近年、ジェンダーに関わる課題について、見聞きすることも増えてきました。
こうしたジェンダーの諸問題を解決したり、従来的な価値観の是正をしたりするための「ジェンダー平等教育、または、ジェンダー教育(本稿ではこちらを使用します)」にも注目が集まっています。今回はジェンダー教育をテーマに、概要や現状の課題、国内外の取り組みをご紹介します。
ジェンダー教育とは?

ジェンダー教育とは性別に左右されず、すべての人の人権を尊重する態度を育むための取り組みです。
ジェンダーとは社会的・文化的に形成される性別を指しており、思いこみや認識による性別区分の是正が求められています。
まずはジェンダー教育の推進によるメリットを確認していきましょう。
男女間の格差是正につながる
ジェンダー教育が浸透すれば男女間の格差是正につながります。男女間の格差とは、教育・健康・経済参画・政治参画などの面における性別による違いを指します。
例えば、雇用や賃金格差といった経済的な不平等を感じる場面はないでしょうか。国会議員に女性が少ないなども男女間の格差の代表例です。
こうした社会の現状を改善するには、私たち一人ひとりの意識をジェンダー教育によって変えていかなくてはなりません。
男女間のトラブル解消につながる
ジェンダー教育への理解が広がれば、男女間におけるハラスメントや性暴力などのトラブル解消に寄与できます。
ハラスメントとは人に対する迷惑行為を指し、女性に対して性的な嫌がらせが発生しているケースも少なくありません。普段の何気ない言動が、女性あるいは男性を傷つけている可能性があるのです。
また、性暴力も世界で問題になっており、女性の3人にひとりが身体的・性的暴力の被害者となっています(注1)。ジェンダー教育を行えば現状を理解するだけでなく、性別優位な考え方の是正につなげることができます。
コンプレックス解消につながる
ジェンダー教育はコンプレックスの解消にも有効です。性別の違いや自分自身の特性にコンプレックスを抱えて生きている方は少なくありません。
男女間の格差もまだまだ残る社会の影響もあり、「女性らしさ」「男性らしさ」という言葉に思い悩んでしまう方が多くいます。
ジェンダー教育では性差や性自認など、多様な価値観を学びます。ステレオタイプな考え方だけではなく、多様な生き方やあり方をジェンダー教育を通じて学べるのです。
ジェンダー不平等における具体的な課題

ジェンダー不平等によって国内外の社会では、さまざまな問題が生じています。ここでは、雇用や賃金の不平等、暴力や虐待の被害、教育に関する格差と差別をとおして、さまざまな問題や課題について解説します。
雇用や賃金の不平等
雇用や賃金は男女間において不平等が残っています。日本を中心に先進国の現状を見てみましょう。
まず、雇用問題の代表例として管理職に占める女性の割合はどうなっているでしょうか。日本は13.2%という現状があり、アメリカの41.4%やイギリスの36.8%などほかの先進国と比べると極めて低い水準です(注2 p.16)。
男女間の賃金格差も日本はまだまだ解消ができていません。男性賃金の中央値に対して女性賃金の中央値が低い割合を示した値で、日本は22.5%というスコアです。イタリアの7.6%やフランスの11.8%に比べて、男女間での賃金の不平等が明確です(注2 p.15)。
世界各国の状況を見ても、男女間の雇用・賃金制度は、男性優位に作られているケースが多くあります。法令の整備やSDGsといった取り組みも活発ですが、まだまだ改善の余地が残されています。
暴力、および虐待の被害
ジェンダー不平等の課題として、ジェンダーに基づく暴力や虐待の問題を忘れてはなりません。社会的階層・経済状況・国を問わず、世界で女性に対する暴力の被害が発生しています。
世界で約3人にひとりの女性が、生涯に身体的または性的虐待を経験しています(注3)。女性への暴力や虐待は健康や尊厳を傷つけるだけでなく、安全や自主性にも強い影響を与えます。
教育に関する格差と差別
教育に関する男女間の格差と差別もまだまだ残っています。世界には小学校・中学校・高校に通うことができない女の子が約1億3200万人もおり、女子教育は不要と考える国や地域が世界には数多く存在するのです(注4)。基礎教育が受けられないと必要な知識が得られないので、社会から取り残されてしまう恐れが高まります。
一方、義務教育が浸透している日本でも、大学などの進学率では違いがあります。男子の大学進学率が56.6%なのに対し、女子は50.7%です。加えて、大学院進学率は男子が14.3%なのに対し、女子は5.5%と高くありません(注5)。日本という先進国で考えても、教育で男女間の格差は残っています。
日本国内におけるジェンダーギャップの現状
日本国内においてジェンダーギャップの解消は、まだまだ進んでいるとは言えません。2022年のジェンダーギャップ指数を見てみると日本の順位は116位で、経済や政治分野において男女格差が顕著です。
1位はアイスランド、ドイツは10位、イギリスは22位、アメリカは27位など、ほかの先進国よりもだいぶ日本は後れを取っています(注6)。
国内外におけるジェンダー教育の取り組み

国内外でジェンダー教育の取り組みが盛んです。アイスランド・イギリス・日本における取り組みの具体例を見てみましょう。
アイスランドの取り組み
アイスランドは2022年のジェンダーギャップ指数でも1位を獲得している、世界でもっとも男女平等な国です。
アイスランドではジェンダー教育が活発で、幼稚園で「男女分けクラス」というユニークな取り組みも行われています。男の子と女の子でクラスを分ける狙いは、性別の違いによる別々の「文化」を大切にしたいためです(注7)。
例えば、力に勝る男の子が遊び場を占有して女の子が遠慮したら、子どもたちの個性が育ちません。子どものそれぞれの文化を存分に堪能できるように、男女分けクラスが設けられています。
イギリスの取り組み
イギリスではジェンダーに関連する取り組みの象徴として、男女平等施策である平等法が設けられています。平等法は既存の9つの差別禁止法が、2010年に整理・統合されて誕生した法律です。平等法によって禁止されている差別は以下の通りです(注8)(注9)。
- 性別
- 年齢
- 障害
- 性適合
- 婚姻および市民的パートナーシップ(同性婚)
- 人種
- 宗教
- 信条
- 性的指向
日本の取り組み
日本国内で行われているジェンダー平等に向けたさまざまな取り組みを見てみましょう。日本では、日常的に使う言葉の呼称統一も進んでいます。例えば、スチュワーデスや看護婦といった言葉は、キャビンアテンダントや看護師など性別にとらわれない職業名へと変わりました。
現代ではジェンダーへの配慮施策として、ランドセルや制服などのカラーバリエーションや選択肢が広がっています。ズボンやスカートなど性差にとらわれない、ジェンダーレス制服のリリースもニュースになりました。
さらに、全国の多くの自治体では男女共同参画社会の実現が推進されています。日々の教育や暮らしの中で、「男らしさ」「女らしさ」などジェンダーにとらわれた慣習が問題になっています。ジェンダーにかかわらず生活のさまざまな場面で、一人ひとりの個性や能力を十分に発揮できる社会が目指されているのです。
ジェンダーに関するワールド・ビジョンの活動

ワールド・ビジョンではさまざまな活動を実施しています。ジェンダーに関する問題をはじめ、具体的なワールド・ビジョンの取り組みについて紹介します。
ワールド・ビジョンの取り組み
ワールド・ビジョンはキリスト教精神に基づいて開発援助・緊急人道支援・アドボカシーを行う国際NGOです。子どもたちのへの支援を募るチャイルド・スポンサーシップをはじめ、幅広い活動を実施しています。
子どもたちと家族、そして地域社会と一丸となって、貧困と不公正を克服する活動を行っているのです。現在では約100カ国で、宗教・人種・民族・性別にかかわらず、すべての子どもたちが健やかに成長できる世界を目指して活動しています。
ジェンダー平等への取り組み
ワールド・ビジョンは、最も弱い立場にある子どもたちを活動の中心にすえており、開発援助、緊急人道支援、アドボカシーの多様な活動において、ジェンダー平等に取り組んでいます。世界には貧困で苦しんでいる女性が数多くおり、開発途上国では女の子であるがゆえに、教育を受けられなかったり、早すぎる結婚を強いられたり、暴力のリスクにさらされている子どもたちが大勢いるのです。
ワールド・ビジョンではそうした問題を解決するため、子どもが女の子であれ男の子であれ、守られて、健やかに成長することができるために、必要な環境を整えていけるよう、チャイルド・スポンサーシップを推進しています。教育を受けることで女の子が生きていく上での選択肢が増え、貧困からの脱出が望めるようになるのです。
ぜひ私たちと一緒に、世界のジェンダー問題や貧困で苦しむ子どもたちをひとりでも救うための活動を行っていきましょう。
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