ウガンダの貧困:生活水準やGDPの世界比較、特徴や支援状況を解説
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この記事でわかること
ウガンダでは約9割の人々が1日5.5ドル以下で生活し、深刻な貧困が蔓延しています。GDPは中位ながら、一人当たりGDPは世界で下位に位置し、経済的豊かさには乏しい現状です。ワールド・ビジョンは、支援を通じて子どもたちの生活改善や地域の自立に向けた取り組みを続けています。
ウガンダは、2021年に開催された東京オリンピックで話題になった国の一つです。ウガンダの重量挙げ選手として来日した20歳の青年が「生活の苦しい国には戻らず、日本で仕事をしたい」という書き置きを残してホテルから失踪し、後に保護されて母国ウガンダへ帰国した一連の経緯を、皆さんも覚えているのではないでしょうか(注1)。オリンピック選手に選ばれるほどのアスリートでも「生活が苦しい」という状況はウガンダに限ったことではありませんが、それでもショックを受けた人も多かったはずです。
この記事では、ウガンダの貧困の現状や特徴を様々なデータとともに解説し、ウガンダで行われている支援についてご紹介します。どのような支援によってどのような変化が生まれているのかを知り、ウガンダの貧困を解消するために何ができるのか考えるきっかけにしていただければ幸いです。
ウガンダの貧困の現状:生活水準と世界比較

まずは、ウガンダの貧困の現状について見ていきましょう。ここでは、貧困率やGDP、そして一人当たりGDPのデータをご紹介します。このようなデータからは、ウガンダの生活水準を具体的にイメージすることができます。
ウガンダの生活水準を示す貧困率
世界銀行が公表している2016年のデータによると、ウガンダにおいて1日あたり1.9ドル以下で生活している人の割合は、41.3%でした(注2)。
1日1.9ドルというのは世界銀行が定めた国際貧困ラインであり、この水準に達していない人々のことを絶対的貧困者と呼びます。以前の国際貧困ラインは1日1.25ドルでしたが、物価の変動を考慮して2015年に1.9ドルに改定されました(注3)。
この改定に伴い、世界銀行は他に1日3.2ドルおよび5.5ドルという2つの水準を設定し、貧困問題をより包括的にとらえようとしています。同じ2016年のデータを見ると、ウガンダにおいて1日3.2ドル以下で生活している人の割合は69.6%、1日5.5ドル以下で生活している人の割合は87.6%とされています(注2)。
国民の約7割が1日3.2ドル(約350円)、そして実に9割近くが1日5.5ドル(約600円)以下で生活しているという状況から、ウガンダでは貧困が蔓延していると言って間違いなさそうです。
ウガンダの貧困をGDPで世界と比較
続いて、国内総生産(GDP)のデータを使って、ウガンダの貧困の水準を世界と比較してみましょう。GDPは、国全体で一定の期間内に生み出された付加価値を示す尺度であり、各国の経済活動の水準を把握するために使われる最も重要な尺度です(注4)。
世界銀行が公開しているデータによると、ウガンダの2020年のGDPは373億7,200万米ドル(約4兆1,045億円)で、データのある206カ国中で、金額の大きい方から数えて第94位でした(注5)。
94位という中間程度の順位について、意外に思ったのではないでしょうか。これにはウガンダの人口が関係しています。日本の本州ほどの面積があるウガンダには、2019年時点で4,427万人が暮らしています(注6)。人口が比較的多いため、国全体の経済力であるGDPの数字はそれに従ってある程度大きくなるのです。
そこで使われるのが、一人当たりGDPという尺度です。これはGDPを人口で割ったもので、各国の平均的な経済的豊かさを示す尺度として広く用いられています。
同じく世界銀行が公開している2020年の一人当たりGDPを見ると、ウガンダは817米ドル(約89,700円)であり、データのある223カ国中で下から17番目にあたる207位となります(注7のデータから計算)。国民の平均的な経済的豊かさという観点で見れば、ウガンダは世界最貧困の一角を占めていることになります。
ウガンダの貧困の改善状況や特徴と支援状況

このような厳しい貧困状態にあるウガンダですが、状況は変わりつつあるのでしょうか。ここからは、ウガンダの貧困の改善状況や特徴を解説し、国際社会からどのような支援を受けているのか、日本の例を挙げてご紹介します。
ウガンダの貧困の改善状況
先ほど紹介した貧困率やGDPのデータは最新のものですが、過去のデータを時系列に並べて比較すると、ウガンダの貧困の改善状況が見えてきます。
過去20年間のウガンダの貧困率の推移を、1日1.9ドル、3.2ドル、5.5ドルという3つの基準別に示すと、次のグラフのようになります(注2)。
全体的に減少傾向にありますが、2012年から2016年にかけては、3つの指標すべてで増加に転じています。特に、1日3.2ドル以下で生活している人の割合は2ポイント以上、1日1.9ドル以下で暮らしている人の割合に至っては5ポイント以上増加しており、2016年までゆるやかに進んでいた貧困削減に、近年ブレーキがかかっていることが読み取れます。
ウガンダの貧困問題の特徴:地域格差
ここ数年で貧困率が上昇している背景には様々な理由があると思われますが、ウガンダの貧困の特徴として無視できないのは、極端な地域格差です。
ウガンダ政府が公開している地域別の貧困率の資料では、首都カンパラを含む南部地域で貧困率が12%以下である地域が多いのに対し、北部および東部では25%以上の地域がほとんどであり、特に北東の国境沿いにあるカラモジャ地域では、実に55%を超えていることが示されています(注8)。このような地域間格差には、ウガンダ北部地域で長年続いた紛争が大きく影響しています。
ウガンダは独立後にクーデターや内戦を経験しましたが、そうした過程で生まれた対立関係を背景に、北部地域で「神の抵抗軍(LRA)」と呼ばれる反政府勢力が生まれました。LRAは兵士として戦わせるために子どもたちを誘拐したり、地域住民を殺害したりといった残虐行為を繰り返し、一時ウガンダ北部における紛争は「世界最悪の人道危機」と呼ばれるほどでした(注9)。
2008年からの掃討作戦によりLRAは事実上撤退しましたが、紛争中はインフラ整備が困難であったため、北部では道路や電力、灌漑設備などの整備が極端に遅れています(注10 p.2)。このような生活環境の深刻な格差が、貧困率の地域間格差を生んでいると考えられます。
ウガンダの貧困に対する日本の支援
日本は、ウガンダが1962年にイギリスから独立した後、1966年に経済協力を開始しました。日本政府は、北部地域とその他地域の格差、また都市部と農村部の格差への対応を課題と認識しており、「経済成長を通じた貧困削減と地域格差是正の支援」をウガンダ支援の基本方針としています(注11 p.344)。
この方針のもと、日本の技術や知見を活かしながら、インフラ整備や人材の能力向上支援を行い、経済成長を実現するための環境を整えることに力を入れているほか、農家の所得向上のための農村開発、地方部での医療や給水分野の支援なども展開しています。さらに北部においては、生計向上や職業スキルの向上、地方政府の能力開発、インフラ開発などの幅広い支援を行い、地域社会の安定化を図ろうとしています(注11 p.344)。
ウガンダの貧しい子どもの人生を変えるチャイルド・スポンサーシップ

ワールド・ビジョン・ジャパンは、チャイルド・スポンサーシップを通して、ウガンダの貧困地域を長年支援しています。これまでの支援で地域に生まれた変化や、元チャイルドの個人的なエピソードからは、チャイルド・スポンサーシップを通した支援がウガンダの貧困削減に大いに役立っていることを感じていただけるでしょう。
チャイルド・スポンサーシップを通したウガンダ貧困地域の支援
チャイルド・スポンサーシップは、支援地域に住むチャイルドとの関係を育みながら、子どもの健やかな成長のために必要な環境を整えていくことを支援するプログラムです。ウガンダでは現在、北東部のロバランギット・カレンガ地域と西部のキルヤンガ地域の2箇所で、このプログラムを展開しています。
このうち、ロバランギット・カレンガ地域が属する北東部のカラモジャ地方は、国内で最も貧しい地域とされ、住民の実に70%以上が貧困ライン以下の生活を送っています。もう一方のキルヤンガ地域でも、住民の2/3以上が自給自足の農業を営んでおり、貧しい生活を強いられています。
このような貧しい地域において、ワールド・ビジョンは、教育や生計向上、保健・栄養改善など、幅広い支援を行っています。
チャイルド・スポンサーシップが地域にもたらした変化
ウガンダでは、これまでに他の地域でもチャイルド・スポンサーシップをとおした支援を行ってきました。2019年度に支援が終了した西部のナラウェヨ・キシータ地域では、教育、保健衛生、水資源開発、そして生計向上など幅広い分野での支援を実施しました。
この地域では多くの住民が農業を営んでいましたが、家庭での消費を目的としていたために生産性が低く、十分に食事をとることができない家族も多く見られました。そこで、ワールド・ビジョンは、近代的な農業技術に関する研修や、トラクターの提供、農家グループの組織化、農産物の販売支援などをとおして、農家の生計向上を図りました。
支援の結果、住民たちは研修で学んだ方法を使って収穫物を長期間保存できるようになり、余剰作物を販売して所得を増やすことに成功しました。このおかげで食事や栄養の状態も改善したほか、増えた所得を貯蓄にまわして不測の事態に備えることもできるようになりました。
この他にも、ワールド・ビジョンの取り組みを通じて、地域の井戸の数が倍増し、初等教育修了試験の合格率も34.7%から71.1%まで飛躍的に向上するなど、多くの劇的な変化が生まれています。
ワールド・ビジョンで会計士として活躍する元チャイルド
ウガンダには、子どもの頃にチャイルドとしてワールド・ビジョンの支援を受け、今はワールド・ビジョンで働いているスタッフがいます。
ワールド・ビジョン・ウガンダで財務担当スタッフとして働くトニーさんは、1992年、小学2年生の時にチャイルドとなりました。当時はウガンダ北部の国内避難民キャンプで生活していたというトニーさんは、チャイルド・スポンサーシップをとおして受けた支援をこう振り返ります。
「チャイルド・スポンサーシップのご支援で、いろいろな活動に参加でき、学費、制服、教科書、ペン、算数セットなどの学用品の支給もありました。私が学業を続けることができたのは、すべてご支援のおかげです。私にとってチャイルド・スポンサーシップは、貧しい子どもたちや両親のいない子どもたちを支えてくれるものでした」
会計士になることは夢だったというトニーさん。その夢を叶えた今、トニーさんはこんな将来の夢を抱いています。
「私の夢は、子どもたちが仲良く暮らし、尊重され、危害や虐待を受けることのない世界を見ることです」
夢を叶えた元チャイルドのトニーさんと共に、ワールド・ビジョンは今後もウガンダの子どもたちのための支援を続けていきます。
チャイルド・スポンサーシップでウガンダの貧しい子どもを支援しよう

チャイルド・スポンサーシップは、月々4,500円、1日あたり150円の継続支援です。
チャイルド・スポンサーになっていただいた方には、幼少期のトニーさんのように支援地域に住む子ども、”チャイルド”をご紹介します。ご支援金はチャイルドやその家族に直接手渡されるものではなく、子どもの人生に変化をもたらすことを目指した様々な長期の支援活動に使われます。
チャイルドは、皆さまと1 対1の関係を育み、支えられていく存在です。支援地域がどのように発展し、チャイルドがそこでどのように成長しているかという支援の成果を、毎年お送りする「プログラム近況報告」と、チャイルドの「成長報告」を通じて実感していただけます。さらに、チャイルドからは1年に1度、グリーティングカードが届くほか、チャイルドと文通していただくこともできます。
子どもたちが皆等しく健康で安全な環境で育ち、教育の機会を得て未来に夢を描けるように、チャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。
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