児童労働の現状と解決策-私たちにできることは?
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この記事でわかること
世界では約1億6,000万人の子どもが児童労働に従事し、多くが危険な環境で働いています。原因は貧困や教育の欠如で、サハラ以南アフリカが特に深刻です。私たちは現状を知り、関心を持つことから支援を始められます。
世界で児童労働に従事する子どもの数は1億6,000万人に達しています。これは世界中の子どもの10人に1人にあたる数です。そのおよそ半数の7,900万人が、有害で危険を伴う仕事に従事しています(注1)。
児童労働は、子どもたちの身体的・心理的・社会的そして教育における成長を阻害し、搾取するものです。国際社会共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)には、「2025年までに児童労働を撤廃する」と掲げられていますが、その達成には未だ程遠く、さらなる対応が求められています。
この記事では、児童労働の現状や原因、解決策について詳しく説明します。また、世界の取り組みや今日から私たちができることも紹介します。児童労働とは何か、解決のために行動できることがあるのか、一緒に考えてみましょう。
児童労働とは

児童労働として禁止されているのは、主に次の2つの場合です。1つ目は、義務教育を受けるべき年齢の子どもが、教育を受けずに働くこと。2つ目は、18歳未満の子どもによる危険有害労働です。
危険有害労働とは、子どもの健康や安全、道徳を害する仕事を指します。具体的には、夜間や長時間の仕事、肉体的・心理的・性的虐待にさらされる仕事などが含まれます。これらの危険有害労働は、売春やポルノ製造、薬物の生産・取引など商業的な目的で子どもを働かせることや、子どもの人身取引、奴隷・強制労働をさせたりする「最悪形態の児童労働」と同様に、最も搾取的な労働と位置づけられています(注2)。
児童労働の現況
国際労働機関(ILO)と国連児童基金(ユニセフ)が2021年に発表した報告書(注3)によると、世界中で1億6,000万人の子どもが児童労働をしています。その内訳は、女の子が6,300万人、男の子が9,700万人です。ILOが2000年に世界推計値を発表して以来、20年に渡って減少し続けた児童労働数が、初めて増加しました。児童労働に従事する子どもの3人に1人は、学校に行っていません。世界中でこれだけ多くの子どもたちが、子どもらしい生活、教育の機会、基本的な人権を奪われているのです。

世界の児童労働者
児童労働の数は地域によって大きく異なります。アジア・太平洋地域とラテンアメリカ・カリブ地域の児童労働は減少傾向が続いています。一方、サハラ以南のアフリカでは2012年以降、増加が続いています。現在、サハラ以南のアフリカで児童労働を強いられている子どもたちの数は8,360万人、全体の約24%を占めています。児童労働の解決を大きく進展させるためには、サハラ以南のアフリカでの取り組みで成果を上げることが不可欠となっています。
児童労働の70%は農業分野で起きています。特に、児童労働に従事する低年齢(5歳から11歳)の子どもたちの4分の3以上が農業に従事しており、いわば児童労働の入り口となっています。農村部で児童労働に従事する子どもの数は、都市部での約3倍です(注4)。
家族経営による農場や零細企業で児童労働に従事する子どもの数は1億1,000万人を超えており、このことは多くの国の農村経済や、国内外のサプライチェーンにおける構造的な問題ともつながっています。
児童労働の原因

児童労働を生み出す「貧困」
児童労働が起きる要因は多岐にわたります。その中でも、子どもがいる家庭や地域・国の「貧困」はもっとも大きな課題であり、貧困と深く関係しているのが「教育機会の欠如」です。
貧困のため、また教育や弱者の保護に関する政策や仕組みの不備、教育の重要性に対する認識の不足などのために、子どもは過酷な環境で労働を強いられ、学校に通うことができなくなります。児童婚の慣習がある地域では、学齢期に結婚することによって女の子が十分な教育を受けられないまま大人になることもあります。
教育を受けられずに成長した大人の多くは、不安定で低賃金の仕事にしか就けなくなりがちです。さらに、子どもの時から続いた過酷な労働によって健康な体を失い、継続的に働けなくなることがあります。
すると家庭をもったあとも十分な収入を得られず、生まれた子どももやがて働いて家族を養わなければなりません。しかし児童労働で得られる収入は決して十分ではなく、家族が貧困から抜け出すのは簡単ではありません。こうして、貧困と児童労働がループのように繰り返される、悪循環が生まれてしまうのです。

ビジネスと人権侵害「子どもは安い労働力」
児童労働の原因を別の側面から考えると、子どもを安い労働力として雇用するビジネスの横行が挙げられます。人権侵害と言えるこうしたビジネスが横行することで、多くの子どもたちが児童労働を強いられているのです。
子どもを安い労働力として雇用するビジネスがなくならない理由は、商品の生産過程における人権侵害に関する認識・情報の不足にあります。また、安い商品を求める私たちの消費行動も、商品の生産過程で児童労働を引き起こす間接的な原因となります。
私たち消費者が安い商品を求めることで、企業側もそれに応えるために他社よりも少しでも安い商品を販売しようとします。そして、安い商品を作りつつ売り上げや利益を上げるために、生産コストを削減しようとします。その削減されていくコストは、原材料の調達費や労働者に支払われる賃金です。結局、コスト削減の大きなしわ寄せが行く先は、開発途上国の生産者たちであり子どもたちなのです。
児童労働につながる私たちの生活
私たちの日常生活の中では、直接目にすることがない児童労働。働く子どもたちの姿は見えなくとも、実は姿を変えて私たちの目の前に存在しています。例えば、店頭に並ぶチョコレート、普段からよく着ている洋服、毎日使うスマートフォン。そこに使われている原料は、カカオやコットン畑、コバルトの採掘現場から得られたもので、そこでは多くの子どもが学校に通えず児童労働を強いられています。
児童労働で作られた商品は、既に私たちの生活の一部になっています。安く買いたいという考えや、安く作って販売し利益をあげたという企業の考えが、児童労働につながっているとも言えるのです。
成長途中の未熟な体で重労働を強いられれば、健康が損なわれます。また、学校に通えず教育を受けられなければ基本的な読み書きが十分できず、大人になっても自立して生きるのが難しくなります。奪われた子ども時代は戻ってくることはなく、彼らが将来に支払う代償は大きいのです。世界の子どもたちの10人に1人が児童労働をしている現状と私たちの生活には、接点があるのです。

児童労働を解決するためには

私たちにできること
それでは、私たち一人一人が、児童労働にさらされている子どもたちのためにできることは、いったい何でしょうか。
今日からすぐにできることは、「知ろうとすること」です。児童労働で作られた可能性のある製品を、日常生活の中で私たちはいつも目にしています。まずは関心を持ち、問題やその解決のために必要なことを考えてみましょう。すぐに答えが出なくても、個人から始まる意識の変化が、児童労働のない社会の実現につながっていきます。
世界では国連機関や各国政府、NGO(国際課題に取り組む非政府組織)などが児童労働をなくすためにさまざまな取り組みをしています。関心を持つだけでなく行動を起こしたい方には、そうした取り組みに寄付をしたり、さまざまな啓発活動に参加することで、支援する方法もあります。
ワールド・ビジョンが取り組んでいること
国際NGO ワールド・ビジョンは、設立から70年以上にわたって、アフリカをはじめとする世界中の開発途上国で児童労働を終わらせ、すべての子どもたちが健やかに育つことのできる環境や仕組みが整えられるよう、地域の人たちと共に取り組んでいます。ワールド・ビジョンは児童労働の解決のために、たとえば次のような活動をしています。
- 教育の質の向上 :教員の教え方の改善や、学校の学習環境を整えます
- 生計向上:子どもを働かせることなく生計を維持できるよう、世帯の生計向上を支援します
- 法制度の整備:児童労働に関わる国内法制度がきちんと施行されるよう政府に働きかけます
- 地域社会、政府、企業への働きかけ:子どもたちを取り巻く様々な人びとや機関が、児童労働の防止について常にそれぞれの責任を果たしていくよう働きかけます
- 啓発:地域社会のさまざまな立場の人たちが児童労働を防ぐために行動できるよう、研修や啓発活動を行います
- コミュニティへの働きかけ:子どもを児童労働させないよう、子どもを中心としたコミュニティ全体のエンパワーメントに取り組みます
- 社会的スキル研修:就労年齢になった若者たちが適正な賃金で就労できるよう、技術訓練、起業、貯蓄などに関するさまざまな研修を実施します
児童労働がなくなるまでの道のりはまだ長く、継続的な取り組みが必要です。ワールド・ビジョンが実施する「チャイルド・スポンサーシップ」や「プロジェクト・サポーター」は、上記のような活動を月々の継続的なご支援で支えていただくプログラムです。毎月の継続支援は、児童労働から子どもを保護するだけでなく、保健サービスの提供や安全な水の確保、栄養改善など、子どもたちの健やかな成長を守るための長期的な活動に用いられます。
今すぐチャイルド・スポンサーシップ/プロジェクト・サポーターに参加するには

1日あたり150円(月々4,500円)から支援できるチャイルド・スポンサーシップには、日本で約5万人の支援者が参加しています。公式サイトにあるこちらのページから申し込めます。
また、子どもたちが暮らしの中で抱えている国際問題をこちらのページで紹介しています。支援する子どもたちへの理解を深めるきっかけとして、ぜひ一度ご覧ください。
皆さまのご支援とご協力をお待ちしています。
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