【レバノン】食料支援を実施しました
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レバノンの避難民家族に生きる希望を
2019年以降、レバノンは経済的および社会的な危機に直面してきました。食料、燃料、医薬品の物価上昇や医療サービスの崩壊といった困難が、新型コロナウイルス感染症の流行によりさらに深刻化しました。状況は2020年8月のベイルート港爆発事故によってさらに悪化し、翌年にはレバノン国民の約74%が貧困状態に陥りました1 。
2023年末、中東地域における暴力の激化により状況はさらに悲惨なものとなり、多くの家族が安全を求めて、避難を余儀なくされました。爆撃が住宅、学校、市場、病院を襲い、日常生活は一変しました。中には何も持たずに避難し、安全な場所やシェルター、食料、安全な飲み水を得るのも難しい人々がたくさんいました。2024年11月に停戦が合意されたものの、すでに多くの人々が家や家族を失っており、生活の再建は困難を極めています。
2024年末までに、約120万人が避難民となったとされています2。紛争により、多くの学校が攻撃を受けたり、避難所として使用されたりしているため、50万人以上の子どもたちが学校に通えなくなっています3。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成金と、日本の皆さまの募金により、レバノン南部およびベカー地域の世帯を対象に食料パックの配布を行いました。避難民家族の生活を支える基本的な食料が含まれており、1パック当たりで5人家族が15日間生活できる量となっています。この命を守るための食料の配布は、避難によって生計手段を失った人々にとって、極めて重要な支援となりました。

ファーティマさん:家族を支える母として
3人の子どもを持つ母親であるファーティマさんは、不安と恐怖を感じつつも、落ち着いた声で、紛争が始まってからの生活がいかに困難であったかを語ってくれました。
「状況はとても悪くて、基本的な生活必需品さえ手に入らなくなるのではと怖かったです。子どもたちは学校に通えなくなり、精神的にも大きな影響を受けています」
彼女は支援を受けられたことに感謝しながら、こう話しました。
「状況は今もまだ厳しく、決して良いとは言えません。ですが、この支援を受けられたことは、私たちにとって何よりもありがたいことでした」
自力では生きていくのに必要な食料を得ることが難しくなっている中、ファーティマさんは、このような支援が継続されることを心から願っています。彼女は最後にこう締めくくりました。
「これまでのご支援、そして関わってくださったすべての方々に神さまの祝福がありますように。本当にありがとうございます」

ターレクさん:家族を守る父として
4人の子どもの父親であるターレクさんは、心は重く、目には疲れがにじんだ様子でした。彼は、家族が経験してきた苦しみについて、悲しみを込め、こう語りました。
「この惨めな状況は言葉では言い表せません。仕事もなく、お金もなく、私たちには何も残っていません」
紛争が始まったとき、彼は家族を安全な場所に避難させ、自らはその場にとどまるというつらい決断を下しました。
「最初に避難した場所は、空爆の影響であまり安全ではありませんでした。最終的にはさらに遠くまで移動し、家族のために、持っていたお金をすべて使って住まいを借りました」
彼の子どもたちは、他の多くの子どもたちと同様に学校に通えなくなり、日々の生活は過酷な闘いになりました。そんな中での食料支援が、彼にわずかな希望をもたらしました。
「本当に助かっています。油やレンズ豆、砂糖などを買わずに済むので、月に50ドルほど節約できるんです」
ターレクさんは、さらなる支援の必要を訴えつつ、彼らが直面している、終わりの見えない困難について強調しました。
「このような支援が今後も続いてくれることを願っています。本当に困窮していて、この支援がなければ私たちは飢えて命を落としていたかもしれません」

この食料支援の取り組みにより、2025年3月から4月の間に2,817世帯(約14,085人)が食料パックを受け取り、ファーティマさんやターレクさんの家族のように、困難の中にある世帯を支援することができました。
それでもなお、彼らの試練は続いており、レバノンにおける継続的な人道支援と、支援を通じた人々の生活の回復と再建が必要とされています。
ワールド・ビジョンでは引き続き、食料の配布をはじめ、生活必需品の提供や現金給付などの活動を行っています。これからもレバノンの人々の命を守る支援を続け、ぜい弱な立場に置かれた子どもたちや人々に寄り添って活動していきます。
今、ワールド・ビジョン・ジャパンでは「難民支援募金」へのご協力を呼び掛けています。紛争の影響を受ける子どもたちや人々の命を守り、未来を築くために、皆さまのご協力をお願いいたします。

1 UNESCWA, ESCWA warns: Three-quarters of Lebanon’s residents plunge into poverty(2021年9月3日
2 UNHCR Lebanon Emergency Flash Update (19 November 2024)
3 UNICEF, Decline in children’s mental health, nutrition and education after the war in Lebanon(2025年2月28日)
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