貧困は寄付で解決できる?世界の子どもを支援するワールド・ビジョン
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この記事でわかること
世界では6人に1人の子どもが極度の貧困に直面し、基本的な「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」権利が脅かされています。特に南アジアやサブサハラ・アフリカでは深刻で、COVID-19により教育・栄養・安全の格差が拡大。寄付を通じた支援が子どもたちの未来を支える力になります。
貧困は寄付で解決できるのでしょうか。貧困の犠牲になるのはいつも、最も弱い立場である子どもです。世界には、今まさに貧困に直面し、なすすべもなく困窮している子どもたちが数多く存在しています。貧困の状態に陥ると、子どもの権利が守られないばかりか、命の危険にさらされます。
寄付をすることで世界の子どもの貧困を解決する方法と、国際NGOワールド・ビジョンによる子ども支援の実例として、寄付によって貧困を脱し夢を叶えた子どもたちの声などを紹介します。
子どもの貧困は寄付で解決できる?
国連児童基金(ユニセフ/UNICEF)と世界銀行グループは、世界の子どもの6人に1人が極度の貧困状態にあり、生きるだけで精いっぱいの状況にあるという分析を発表しました(注1)。この数字は、2020年に起こった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以前のものなので、現在はさらに深刻な状態に陥っていると考えられます。極度の貧困状態にある世界の子どもたちを、寄付で救うことはできるのでしょうか。
世界の子どもが直面している貧困とは
貧困に苦しんでいる世界の子どもは複雑な問題に直面しており、子どもの権利が脅かされている状態です。まずは「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」について見てみましょう。
「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。18歳未満の人たちを子どもと定義し、世界のすべての子どもたちに、自らが権利を持つ主体であることを約束しています。1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効しました。日本は1994年に批准しました。
UNICEF & 日本:子どもの権利条約(注2)
子どもの権利条約は54条から成り立っており、その内容は「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の4つに分けることができます。
生きる権利・・・すべての子どもの命が守られること
育つ権利・・・・もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、
生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること
守られる権利・・暴力や搾取、有害な労働などから守られること
参加する権利・・自由に意見を表したり、団体を作ったりできること
UNICEF:子どもの権利条約(注3)
極度の貧困状態にある世界の子どもたちは、これら4つの権利が守られていません。たとえば、ぜい弱な環境で暮らしている難民の子どもは、紛争や暴力、栄養不良、気候変動や天災、感染症、差別などの影響を直に受けており、「生きる権利」「守られる権利」が脅かされています。
また、「育つ権利」を得るための教育の機会や、友達と子どもらしく遊ぶ場所も限られています。子どもたちが意見を発表する場やそれが反映されるような機会もほとんど無く、「参加する権利」を持たない子どもが大勢いるのです。
これらの深刻な状態にあるのは、難民のような特殊な状況にある子どもだけではありません。世界銀行の発表によると、2015年の時点で世界の貧困層の85%は南アジア地域とサブサハラ・アフリカ地域に分布しています(注4)。南アジアやサブサハラ・アフリカの国々に住む貧困状態にある子どもたちも、難民の子どもと同じように子どもの権利が守られていない状況にあるのです。
2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックの影響で、世界中の子どもたちの生活が一変しました。世界の多くの地域で学校が閉鎖され、インターネットを使った授業が行われました。しかし貧困層の子どもはオンライン授業にアクセスできる環境も機材もありません。教育の機会が奪われ、格差がますます拡がっているのです。
さらに流通が途絶えることで食べ物の確保が難しくなり、栄養不良に陥る子どもはさらに増えることでしょう。ロックダウンの影響で家庭内暴力の被害に遭う子どももいます。貧困のために感染症を予防するための安全な水や石鹸、消毒液、マスクなどが手に入らず、命を落とす子どもの数は増え続けているのです。
このように貧困に苦しむ世界の子どもたちは、世界的なパンデミックなど新たな困難も加わるなかで、さまざまな問題に囲まれているのです。
貧困の中を生きる子どもが寄付で救われた例
貧困により子どもの権利が守られず、命の危険にさえ直面しているような子どもたちが、寄付により救われた例はいくつもあります。今回は、災害や紛争などで状況が一変した人々を救う人道支援について見てみましょう。
国際連合は、「単独の国家当局の能力を超える自然災害や人為的災害に対応できるように国際社会を先導する」という目的のもと(注5)、第2次世界大戦以降から人道支援を実施してきました。
現在ではユニセフ、世界食糧計画(WFP)、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国連開発計画(UNDP)といった国連機関が、人道危機に際して保護と援助を提供する役割をっています。(注6)
国連機関の資金源は、各国政府からの拠出金に加え、様々な団体や個人からの寄付金です。人道支援を行う国連の各機関は、常時寄付を呼び掛けています。
ユニセフを例にしましょう。ユニセフは、2019年に次のような人道支援を実施しました。
人道支援
・ユニセフは96か国で281の紛争や自然災害などの緊急事態に対応しました。
・緊急事態下の4,130万人の子どもにはしかの予防接種を行いました。
・緊急事態下にある740万人の子どもたちに教育の機会を提供しました。
UNICEF:ユニセフ活動報告(注7)
2019年度のユニセフの活動資金は次のグラフのとおりで、活動資金の23%が民間部門から寄せられたもので、その中に個人の寄付が含まれています。
国際NGOも、貧困に苦しむ世界の子どもを寄付で救う活動をしています。国際NGOワールド・ビジョンでは、2019年度に32カ国で159事業を実施し、継続的な寄付により支援を受けている子どもの数は57,575人にのぼりました。それに加えて緊急人道支援や日本国内の子どもたちへの支援活動も行っています。これらの活動資金の64.5%が、寄付や募金によるものなのです。(2019年度年次報告書より)
ワールド・ビジョンは50年以上の活動を通して、モノを支援するだけでは問題の解決にはならないことを経験しました。困難な状況に生きる子どもたちが、教育を受け、健やかに成長することができるように、地域の貧困を解決する開発活動を行っています。そのほとんどが寄付によるもので、長期的で継続的な支援が行われています。
さらに緊急人道支援に関しては、寄付や募金により必要なものをそろえ、迅速に現場に届ける活動もしています。この場合はモノを支援することを先行し、後に長期的な支援活動に移行しています。
このように数多くの子どもたちが、寄付による活動で救われているのです。
世界の子どもの貧困を寄付で解決するワールド・ビジョン
7割近くの活動を寄付や募金で行っているワールド・ビジョンですが、どのような方法で、子どもの貧困を解決しているのでしょうか。子どもの貧困を解決する寄付の種類について見てみましょう。
ワールド・ビジョンとは
ワールド・ビジョンは、キリスト教精神に基づいて開発援助、緊急人道支援、アドボカシー (市民社会や政府への働きかけ)を行う国際NGOです。子どもたちとその家族、そして彼らが暮らす地域社会とともに、貧困と不公正を克服する活動を行っています。宗教、人種、民族、性別にかかわらず、すべての人々のために働いています。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、約 90 カ国で活動する国際 NGO ワール ド・ビジョンを構成する支援国事務所として、1987 年に設立されました。「開発援助(チャイルド・スポンサーシップ等)」「緊急人道支援」「アドボカシー」を活動の柱とし、世界の子どもたちが未来に希望を持つことができるよう、多角的な支援を継続しています。この活動の大部分は、寄付や募金で成り立っています。
子どもの貧困を解決する寄付の種類
開発途上国で貧困に苦しむ子どもたちに届けるために、ワールド・ビジョンにはどのような寄付の種類があるのでしょうか。
寄付には、長期的に継続して行うものと、ある問題に対して単発で支援するものの2つがあります。
長期的に継続して支援を行うのがチャイルド・スポンサーシップとコミュニティーサポーターです。チャイルドやコミュニティの変化が報告され、寄付の効果を知ることができます。
ある問題に対する単発的な支援は、難民支援、危機にある子どもたちのための募金、緊急人道支援などです。そして、栄養不良の子どもの命と未来を守る食糧を届けるクリスマス募金/水と食糧のための募金や、現在世界中の人々を苦しめている新型コロナウィルスへの緊急支援も実施しています。
大規模な支援を寄付によって行うこともできます。特別プロジェクト支援、マイルストーン・プロジェクト、遺贈、遺産や相続財産などのご寄付などの制度があります。
学校や職場、学校、お店などに置いて募金を集めるラブ・ローフ募金、イベントを通した募金活動も可能ですので、お問い合わせください。
貧困に苦しむ世界の子どもを救うチャイルド・スポンサーシップ
貧困に苦しむ世界の子どもを救う寄付は様々ありますが、チャイルド・スポンサーシップは子どもの未来を確実に変える力があります。その仕組みについて解説しましょう。
チャイルド・スポンサーシップとは
チャイルド・スポンサーシップとは、子どもたちに直接物資や学費を送る方法ではなく、長期的に子どもたちの住む地域をサポートし、地域全体で問題を解決していくように働きかけていくものです。
1日150円、月々4500円のご支援を継続する「チャイルド・スポンサー」になると、支援地域に住む子ども「チャイルド」と出会います。
毎年届くチャイルドの成長報告では、子どもが健やかに育っている様子を確かめることができるでしょう。また、チャイルドと文通したり、会いに行って交流することもできます。日本から遠く離れた国に住むチャイルドと心のつながりを持つことは、大変貴重な体験になることでしょう。チャイルド・スポンサー同士の交流の機会もあるので、同じ志の仲間を得ることも可能です。
チャイルド・スポンサーになることで、チャイルドが住んでいる地域全体の教育、保健衛生、水資源開発、経済開発、農業などの状況を改善する事業をサポートすることができます。地域に住む大人たちの意識も変わり、チャイルドの生活環境が向上します。
地域の実情に沿った開発をするチャイルド・スポンサーシップの取り組みこそが、開発途上国の子どもを支援し、直面している8つの問題(貧困、教育、水衛生、保健・栄養、紛争・難民、災害、人身取引・人身売買、児童労働)を解決する仕組みなのです。
2019年度のチャイルド・スポンサーの数は48,426人でした。
2020年からは、株式会社不二家のマスコットキャラクターとして有名な「ペコちゃん」もチャイルド・スポンサーのひとりになりました。ウガンダ、コンゴ民主共和国、スリランカ、タンザニア、フィリピンに住む10人の子どもたちの支援が開始されました。
寄付によって貧困を脱した子どもたちの声
チャイルド・スポンサーの支援を受けたチャイルドは、確実に生き方が変わります。たとえば経済的な理由で学校に行けなかった子どもが、教育を受けることができるようになり、将来への選択肢を増やすことができます。衛生的な環境ができ、必要な栄養がとれるようになることで、健康状態が改善します。チャイルド・スポンサーシップによって夢をかなえたチャイルドも大勢います。その一例をご紹介しましょう。
グアテマラの大統領になったチャイルドがいます。ジミー・モラレスさんは2016年に大統領に就任し、2020年1月14日に任期満了で退任しました。チャイルド・スポンサーシップによって教育の機会を得て、貧困を乗り越えることができました。大統領として国を率いるまでに成長したのです。
モラレス元大統領は3歳の時にお父さんを亡くしました。お母さんが一生懸命働いて育ててくれましたが、貧しさのために小学校の生徒になることができませんでした。そんな中、ワールド・ビジョンの支援を受け、兄妹と共に学校に通うことができるようになったのです。支援してくれたチャイルド・スポンサーの事もよく覚えているそうで、学校に通えていることへの感謝の手紙を書いたそうです。モラレス元大統領は、「チャイルド・スポンサーシップが人生に良い変化をおこしてくれた」「夢はきっとかなうと伝えたい」と語りました。
ケニアのスティーブンさんは、お母さんと兄弟6人でスラムで暮らしていました。お母さんは野菜を売って生計を立てていましたが充分な収入は得られず、食べるものも満足に得られず、靴すらも買えませんでした。
学用品も買えない状態だったスティーブンさんは、チャイルド・スポンサーシップの支援により学校に行けるようになりました。そして、京都大学の大学院で農業エンジニアリングを学ぶ機会も得たのです。スティーブンさんは「今度は自分が人の役に立ちたい。今日生きることに必死で夢を見ることも知らない、小さい頃の僕のような子どもたちの為に」と考えています。
インドのアマンディ―プさんは「女の子には教育は必要ない」という価値観が残る地域で貧しい暮らしをしていました。「貧しいから、女の子だから」という二重苦の中、教育を受けられない苦しみを知っている両親が、生活を切り詰めてアマンディ―プさんを学校に通わせました。アマンディ―プさんは教育を受けることで「自分にも可能性がある」と気づき、看護師になるという夢を持つようになりました。
しかし、看護学校の学費がどうしても払えず夢をあきらめかけた時に、ワールド・ビジョンから学費の支援を受けることができるようになりました。睡眠時間3時間で勉強に励み、看護師になる夢を叶えることができました。
タンザニアのエリエットさんは、1日9時間かけて水くみをする生活を送っていました。とても学校へ通う状態ではありません。エリエットさんが9歳の時、ワールド・ビジョンの支援で村に井戸ができました。そしてチャイルド・スポンサーシップによって学校へ通えるようにもなりました。
エリエットさんはワールド・ビジョンのスタッフから「夢を叶えることができる」ことを教わったそうです。それまでは将来自分が何になるか考えたこともありませんでしたが、学校の先生になるという夢を持つようになりました。夢が叶って学校の先生になったエリエットさんは、生徒たちに「あなたにも人生を変える力がある」と教えているのだそうです。
エルサルバドルのデルビンさんは、10歳の時から12年間、チャイルド・スポンサーシップの支援を受けました。それまではとても貧しい暮らしでしたが、チャイルド・スポンサーシップの支援で給食や学生生活に必要なものは全て支給され、病気の時は治療を受けることもできるようになりました。現在はプロの陸上選手として活躍しています。
デルビンさんは、12年間支援してくれたチャイルド・スポンサーと会うことができました。遠くからデルビンさんの事を大切に想ってくれていることを知り、とても嬉しかったそうです。「獲得したトロフィーやメダルの数は忘れても、ワールド・ビジョンがしてくれたことは一生忘れない」と語ってくれました
1日150円、月々4500円のご支援を継続する「チャイルド・スポンサー」になると、支援地域に住む子ども「チャイルド」と出会います。
毎年届くチャイルドの成長報告では、子どもが健やかに育っている様子を確かめることができるでしょう。また、チャイルドと文通したり、会いに行って交流することもできます。日本から遠く離れた国に住むチャイルドと心のつながりを持つことは、大変貴重な体験になることでしょう。チャイルド・スポンサー同士の交流の機会もあるので、同じ志の仲間を得ることも可能です。
チャイルド・スポンサーになることで、チャイルドが住んでいる地域全体の教育、保健衛生、水資源開発、経済開発、農業などの状況を改善する事業をサポートすることができます。地域に住む大人たちの意識も変わり、チャイルドの生活環境が向上します。
地域の実情に沿った開発をするチャイルド・スポンサーシップの取り組みこそが、開発途上国の子どもを支援し、直面している8つの問題(貧困、教育、水衛生、保健・栄養、紛争・難民、災害、人身取引・人身売買、児童労働)を解決する仕組みなのです。
2019年度のチャイルド・スポンサーの数は48,426人でした。
2020年からは、株式会社不二家のマスコットキャラクターとして有名な「ペコちゃん」もチャイルド・スポンサーのひとりになりました。ウガンダ、コンゴ民主共和国、スリランカ、タンザニア、フィリピンに住む10人の子どもたちの支援が開始されました。
貧困に苦しむ世界の子どもが支援を待っています
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが経済に及ぼした影響により、2020年末までに貧困下の子どもが15%増加し、最大8,600万人の子どもが新たに貧困に追い込まれる恐れがある(注9)」という予測がユニセフによって発表されました。貧困に苦しむ世界の子どもたちは増え続けているのです。
貧困に直面している子どもが支援を待っています。ひとりでも多くの子どもを救うために何かできることを始めましょう。
参考資料
注1 ユニセフ:子ども6人に1人が極度の貧困で暮らす ユニセフと世界銀行による分析
注2 UNICEF & 日本:子どもの権利条約
注3 UNICEF:子どもの権利条約
注4 The World Bank:1年を振り返って:14の図表で見る2019年
注5 国際連合広報センター:人道支援
注6 国際連合広報センター:人道支援と保護
注7 UNICEF:ユニセフ活動報告
注8 UNICEF:ユニセフの財政
注9 UNICEF:新型コロナウイルス 貧困層の子ども8,600万人増加のおそれ ユニセフなど、家庭への支援訴え
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