フェアトレードとは何か?必要とされる背景や意味・対象商品を簡単に解説

投稿日|2025年3月27日
更新日|2025年3月31日
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この記事でわかること

フェアトレードとは、開発途上国の生産者が正当な価格で商品を取引できるよう支援する仕組みで、貧困削減や経済的自立を目的とします。歴史は1947年に始まり、現在は食品や日用品など幅広い商品が対象。消費者の選択が公正な貿易と持続可能な社会の実現に直結する重要な行動とされています。

「フェアトレード」や「フェアトレード商品」といった言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。フェアトレードとは開発途上国の商品を正当な価格で購入し、生産者の生活力や国の成長を支援する仕組みのことです。では、なぜこうした仕組みが必要とされているのでしょうか。

本記事ではフェアトレードの意味や必要性、対象商品などについて簡単に解説します。フェアトレードについて正しい知識を持てば、普段の買い物でも開発途上国の支援ができます。また、SDGsとの関係性やほかにどういった支援ができるのか、理解が深まるでしょう。

ぜひ私たちと一緒に、自分にできることを考えていきましょう。

フェアトレードとは何か

フィリピンで暮らす子ども
フィリピンで暮らす子ども

まずはフェアトレードの歴史から簡単に見ていきましょう。フェアトレードの始まりは、第二次世界大戦が終わってすぐの1947年といわれています。アメリカの国際NGOでボランティアをしていた女性が貧しいプエルトリコの女性たちを支援するために手工芸品を買い取り、バザーで販売したのがフェアトレードの始まりです。

1950年代以降、こうした活動は「慈善貿易」と呼ばれ、ヨーロッパにも広まっていきました。この頃の活動はフェアトレードではなく、オルタナティブトレード(もうひとつの貿易)と称されていたそうです。

それが1970年代に入り、開発途上国の人々を適切な貿易で支援する動きが本格化しました。そこで公正な価格の貿易という意味合いから、フェアトレードという言葉が誕生したとされています。

日本でも1970年代に、バングラディシュとネパールを支援するNGO団体が設立。1974年に洪水に見舞われ、生活に困窮した女性たちの手工業品を買い取って店頭で販売したのが日本におけるフェアトレードの始まりとされています(注1)。

フェアトレードの意味

本来、貿易は買い手にも売り手にも利益が生じるものです。しかし、実際には売り手の立場が弱いために適切な価格で買い取ってもらえず、貧しい生活から抜け出せないといったケースがあります。

特に第二次世界大戦以前の世界では数々の列強国が海外へ進出し、植民地政策を行っていました。植民地では現地の人を奴隷として働かせ、できた農作物の利益の多くは支配国のものとする。こうしたことが、当たり前のように行われていたのです。

また独立後も、旧宗主国に農作物を輸出するしかなく、植民地時代の立場から完全に抜け出せないまま不利な貿易を強いられることも少なくありません。このように、本来フェアであるはずの貿易に力関係が生じてしまうことがあるのです。

こうした状況を放置していては、いつまでも開発途上国の経済や人々の暮らしは豊かになりません。そこで各国が意識的に協力し、生産者の生活力や国の成長を支援しようというのがフェアトレードの意味です。

フェアトレードの対象商品

現在、世界には、国際フェアトレード基準と呼ばれるものが設けられています。この基準は原料や生産過程、輸出入においてフェアトレードだと認められるかを判断するためのものです。国際フェアトレード基準を満たした商品には、国際フェアトレード認証ラベルが付与され、具体的には、以下のような対象商品があります。

食品 食品以外
・コーヒー
・紅茶
・チョコレート
・はちみつ
・砂糖
・アイスクリーム
・穀類
・野菜
・大豆
・ごま
・シアバター
・オリーブオイル
・ワイン
・ジュース
・ドライフルーツ
・バナナをはじめとする果実
・コショウ
・シナモンなどのハーブ
・スパイス
・ナッツ


・スポーツボール
・切り花
・観葉植物
・コットン
・化粧品
・クレヨン
・キャンドル
・ゴールド
・シルバー

フェアトレードの背景を簡単に知ろう

ウガンダで暮らす子どもたち
ウガンダで暮らす子どもたち

国際フェアトレード基準は、以下のとおり3つの柱があり、さまざまな条件が設けられています。

社会的基準 環境的基準 経済的基準
・安全な労働環境
・民主的な運営
・差別の禁止
・児童労働・強制労働の禁止
・農薬薬品の使用削減と適正使用
・勇気栽培の奨励
・土壌・水源・生物多様性の保全
・遺伝子組み換え品の禁止
・フェアトレード最低価格の保証
・フェアトレード・プレミアムの支払い
・長期的な取引の促進
・必要に応じた前払いの保証

これらの基準は、不公平な貿易がもたらすあらゆる問題を背景に作られています。では、それぞれの不公平な貿易にどういった問題や課題があるのか見ていきましょう。

児童労働

不公平な貿易が続くと、貧しい輸出国では子どもが労働に参加させざるを得なくなってしまいます。地域によっては農作物を作っても満足な収入が得られず、子どもを学校に行かせる費用もまかなえません。結果的に、教育を受ける権利があるはずの子どもたちも労働力として見なされてしまうのです。

2021年に発表された国際労働機関(ILO)とユニセフの共同報告書によると、世界の児童労働者数は1億6,000万人とされています(注4)。2000年から世界では児童労働撲滅に向けてパートナーシップを結び、さまざまな取り組みを実施してきました。その成果もあり、2000年から20年間で世界の児童労働は減少傾向に向かっていました。

しかし、2020年には新型コロナウイルス感染症の影響もあり、20年ぶりに児童労働数が上昇しました。特にサハラ以南アフリカでの児童労働数が増えており、全体の7割にあたる1億1,200万人が農林漁業に従事しています(注4)。

そのため、児童労働の当事者である子どもたちは適切な教育が受けられず、将来の選択肢が狭まる要因となっているのです。結果的に両親と同じ生活を繰り返すことになり、貧困の連鎖が断ち切れないケースも少なくありません。フェアトレードがより広く実現されれば、こうした子どもたちを児童労働から救うことになります。

環境問題

貿易では商品を生産、加工、輸送するあらゆる段階で石油などの資源を使います。国際フェアトレード基準では、ただ開発途上国の生産を奨励して適切な価格で買い取るだけではありません。限りある資源を適切に使い、環境に配慮した生産をしているかどうかも条件としています。

地球温暖化が進んでいる昨今、エネルギー消費量やCO2の排出量を抑えることは急いで解決する必要がある課題です。経済は成長するほどエネルギー消費量が増えるとされているため、今後経済が成長していく開発途上国のエネルギー効率をいかに高くするかは非常に重要といえます(注5)。

地域による経済格差

国際フェアトレード基準では、経済的観点からの基準も設けられています。例えば、生産者組合によって定められたフェアトレード・プレミアムという、商品の価格とは別に支払う地域開発資金を設定。買い取る側は最低保証額を支払うだけでなく、「フェアトレード・プレミアム」を支払うことが定められています。

また安定した取引の実現や、必要に応じた前払いの保証など、輸出国が不利にならないようさまざまな項目が設定されているのです。しかし、世界の経済格差は、今も解消されていません。世界不平等研究所の発表した世界不平等レポート2022によれば、上位10%の富裕層が所有する資産は世界全体の75.6%を占めているとあります。

一方、下位50%の貧しい家庭が所有する資産は全体の2%にすぎません(注6)。よりフェアトレードを広め、こうした格差を是正していく必要があります。

フェアトレードとSDGsの関係とは

ケニアで暮らす子どもたち
ケニアで暮らす子どもたち

フェアトレードとSDGsは密接に関係しています。例えばフェアトレードが実現されれば、輸出国の経済が豊かになり貧困から抜け出せる人が増えるでしょう。これはSDGsの目標1「貧困をなくそう」に大きく貢献します。

さらにフェアトレードによって適切な労働環境が整備され、児童労働がなくなればSDGsの目標8にある「働きがいも経済成長も」を達成できるはずです。ほかにも、飢餓の撲滅や環不平等の解消、環境保全など、フェアトレードはSDGsのあらゆる目標達成に影響します。

ワールド・ビジョンのフェアトレードへの取り組み

マラウイで暮らす子どもたち
マラウイで暮らす子どもたち

ワールド・ビジョンは各国の政府や国際連合といった機関と連携し、世界で貧困に苦しむ子どもたちを救うために活動しています。これまで数々の支援事業を展開しており、児童労働を撤廃するためのプロジェクトも多数行ってきました。

例えば2022年には、ホンジュラスで児童労働を防ぐワークショップを開催。このワークショップは、児童労働の多い農作物の代表例であるコーヒーを使い、子どもたちがアート作品を作るというものです。

児童労働防止委員会のメンバーや教師など、さまざまな立場の人が参加することでコーヒー産業とそのバリューチェーンに関する知識を広めるだけでなく、アートを通じてコーヒー豆の異なる活用方法を学ぶといった狙いもあります。

ワールド・ビジョンは、ただ開発途上国にものや資金を支援するのではなく、子どもたちが労働から解放されるには根本的に何が必要なのかを考え、地域に根差した支援を実施してきました。なかでも「チャイルド・スポンサーシップ」は、長期的な目線で子どもたちを取り巻く環境改善に寄与しています。

フェアトレードは簡単なことから実現できる

カンボジアで暮らす子どもたち
カンボジアで暮らす子どもたち

貿易というと自分とは無関係に思えるかもしれませんが、実は身近な商品が国際フェアトレード認証ラベルを取得していることもあります。こうした商品を選んで購入していくことが、フェアトレードがより広く社会に普及することに貢献できるのです。

また私たちワールド・ビジョンは、困難の中にある子どもたちに対して、皆さまからの寄付を募り、「チャイルド・スポンサーシップ」を通じて、子どもを児童労働から守るために地域に応じた取り組みを実施してきました。

例えば、生計向上に関する研修を行ったり、より生活が便利になるよう井戸を作ったりと、さまざまな用途に活用しています。ご支援をいただいた方には現地の子どもたちから直接手紙が届き、成果をご実感いただけるプロジェクトです。

皆さまのご支援によって命が守られ、未来を拓くことができた子どもたちがたくさんいます。私たちの活動に共感していただけましたら、ぜひ「チャイルド・スポンサーシップ」へのご協力をお願いいたします。

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