SDGs目標2「飢餓をゼロに」|現状と取り組み、私たちにできること

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連総会で採択された2030年までの新たな国際開発目標です。
SDGsの目標の2つ目に挙げられているのが「飢餓をゼロに」という目標です。しかし「飢餓をゼロに」と聞いても、「どこの」飢餓を「どのようにして」なくすのか、イメージがわかない人もいるでしょう。

そこで本記事では、SDGsの2つ目の目標である「飢餓をゼロに」について詳しく解説します。目標達成に向けて現在どのような状況にあり、具体的にどういったことが行われているのかを知り、自分にできる支援について考えてみましょう。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは

飢餓や干ばつが深刻なケニアで暮らす子ども
飢餓や干ばつが深刻なケニアで暮らす子ども

「飢餓をゼロに」という目標は、SDGsの中で2つ目に掲げられている目標です。SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)においても、「極度の貧困と飢餓の撲滅」という目標が1つ目に掲げられていました(注1)。それだけ飢餓は重要な問題であるということです。

「飢餓をゼロに」という目標には、以下の8つの具体的なターゲットが設けられています(注2)。

2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層および幼児を含むぜい弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする
2.2 5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦および高齢者の栄養ニーズへの対処を行う
2.3 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場および高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民および漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性および所得を倍増させる
2.4 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水およびその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する
2.5 2020年までに、国、地域および国際レベルで適正に管理および多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物およびこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源およびこれに関連する伝統的な知識へのアクセスおよびその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する
2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発および植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る
2.b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金および同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正および防止する
2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場およびデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする


この目標は「2030年までに、飢餓とあらゆる栄養不良に終止符を打ち、持続可能な食料生産を達成すること」を目指すものであるため、飢餓だけではなく栄養不良の解消や農業生産性の向上、災害への適応能力の向上など、幅広い達成目標が掲げられています。
例えば、2.aで農業生産力向上のため、国際協力の強化への明確な言及があるとおり、飢餓を撲滅するために国境を越えた幅広い取り組みが求められていることがわかります。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」の現状

アンゴラにて、子どもの体重、身長、上腕周囲径の測定などの検診を待つ母親たち
アンゴラにて、子どもの体重、身長、上腕周囲径の測定などの検診を待つ母親たち

続いては、「飢餓をゼロに」という目標に対して、現在、世界において飢餓の状況がどのようなものなのかを見ていきましょう。飢餓というと開発途上国のイメージが強いかもしれませんが、実は日本も飢餓と無縁ではありません。

世界における飢餓の状況

国連児童基金(UNICEF)によると、世界では11.9%の人々がその日食べるものがなく、翌日以降も食べ物を得られるかわからないという深刻な食料不安に直面しています。これに加えて、18.5%の人々は中程度の食料不安にさらされており、十分な量の食料を得られなかったり、あまり健康に良くない安価な食品に頼らざるを得ない状況に置かれているのです。特にサハラ以南のアフリカや南アジアでは栄養不良がまん延しており、5歳未満の子どもの3人に1人が慢性栄養不良に苦しんでいる状況です(注3)。

飢餓が発生する理由はさまざまですが、国際社会の飢餓への取り組みを主導している国連世界食糧計画(WFP)は、飢餓の主な原因として、紛争、気候変動、災害、格差などを挙げています(注4)。例えば気候変動は、干ばつや洪水といった自然災害をもたらし、何百万人もの人々の命と食料安全保障に重大な影響をおよぼします。

また、世界で飢餓の影響を受けている人の割合は、新型コロナウイルス感染症の大流行が始まった2020年から増加傾向にあります。飢餓の影響を受けている人の数は2021年に8億2,800万人に達し、これは世界人口の9.8%にあたります(注5)。

このように飢餓の状況が悪化している中で、2022年9月に、世界で活動する人道支援組織238団体が国連総会に連名で公式書簡を提出し、飢餓への緊急の対応を要請しました。この書簡の中では、4秒にひとりが飢餓で命を失っているというショッキングな推計が報告されています(注6)。長引く新型コロナウイルス感染症のまん延に加えて、ウクライナ危機の影響で食料価格や生活費が一層高騰していることが、飢餓の拡大に拍車をかけているのです。

日本における飢餓の状況

社会保障が発達した日本では、飢餓は珍しく、飢餓によって命を落とす人が出ればニュースになるほどです。しかし、国立社会保障・人口問題研究所の2017年の調査によると、経済的な理由で家族が必要とする食料が買えなかった経験がある世帯の割合は合計13.6%となっています。

特に、祖父母などの同居がなく、親子で暮らすひとり親世帯ではこの割合が35.9%にものぼるのです(注7)。すなわち、シングルマザーやシングルファザーの世帯では、3分の1以上が食料に困った経験があるということになります。

2015年の調査によると、日本の相対的貧困率は15.6%ですが、ひとり親家庭では相対的貧困率が50.8%と、とても深刻な状態です(注8)。なお、相対的貧困とは、その国や地域の水準において大多数よりも貧しい状態を指し、具体的には世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない状態のことを指します(注9)。

このような調査結果を見れば、日本も飢餓と無縁とは言えないことがわかるでしょう。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」への取り組み事例と私たちにできること

マリで暮らす栄養不良の子どもの身長を測る様子
マリで暮らす栄養不良の子どもの身長を測る様子

それでは、「飢餓をゼロに」という目標の達成に向けて、世界ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、まず取り組みの方針と日本政府の取り組み事例を概観し、私たち一人ひとりにできることもご紹介します。

世界における飢餓の解決への取り組み事例

WFPは、飢餓をゼロにするための方法として、次の5つを挙げています(注10)。

1. 最も貧しい人を最優先に
2. 農家と市場をつなぐ流通網を整備
3. 食料廃棄・ロスの削減
4. 持続可能で多様な作物の推進
5. 人生最初の1,000日間の栄養改善

飢餓をゼロにするためには、農業など食料の供給に関わる取り組みだけではなく、流通や廃棄、栄養改善など幅広い分野にまたがる対策が求められることがわかります。

日本政府は、農林水産業の育成等を重視し、世界の食料問題に積極的に取り組んでいます。短期的な取り組みとしては、食料不足に直面している国に対し、米や小麦粉などを提供する食糧援助を行っています。中長期的な支援としては、開発途上国の農業生産性の向上や生産量の増加を目指し、フードバリューチェーンの構築、灌がい施設などのインフラ整備、農業の組織化、そして栄養改善など幅広い支援を展開しています(注11)。

飢餓の解決に向けて日本の私たちにできること

飢餓をゼロにする方法としてWFPが3つ目に挙げている「食料廃棄・ロスの削減」は、日本で暮らす私たち一人ひとりにも実践しやすいものです。

事実、SDGsによって食品ロス削減の機運が世界的に高まっていることを受けて、日本政府もこうした取り組みを「国民運動」として推進しています。2019年に食品ロス削減推進法が施行され、2022年3月には、その基本方針が閣議決定されました。日本では2012年から食品ロスの量の推計が公表されていますが、こうした政府の後押しもあり、2020年の食品ロス量は推計の開始以来最少となりました(注12)。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」達成に向けたワールド・ビジョンの取り組み

栄養センターを訪れたロヒンギャ難民の子ども
栄養センターを訪れたロヒンギャ難民の子ども

最後に、飢餓をゼロにするためにワールド・ビジョンが世界で展開している支援活動を詳しくご紹介します。ワールド・ビジョンも日本政府と同じく、緊急支援から継続的な支援までさまざまなかたちで飢餓への取り組みを行っています。

緊急人道支援

すでに触れたとおり、ウクライナ危機などの影響で、飢餓の危険は高まり続けています。紛争の影響により、世界的に食料や日用品、輸送価格が高騰したことで、壊滅的な飢餓状態に置かれている人々の数はわずか15カ月の間に4倍に増加しました。

これを受け、ワールド・ビジョンは、2022年6月に飢餓の危機にある人々への世界的な支援を開始しました。支援ニーズの規模は非常に大きく、ワールド・ビジョンがこのような世界規模の対応を開始したのは、新型コロナウイルス感染症への緊急対応に次いで、史上2度目です。

食料不足の深刻度を示す指標である総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification、略称IPC)の5段評価のうち最も深刻なレベルとされる「飢きん」(IPC5)の段階に現在陥っている、または直面すると予測されているイエメンやソマリア、エチオピア、アフガニスタンを含む最も被害の大きい24カ国を中心に、飢餓と栄養不良に対処するための支援を行っています。

クリスマス募金(水と食糧のための募金)

ワールド・ビジョン・ジャパンが毎年11月から呼びかけている「クリスマス募金」は、生きるために必要な水と食糧のための支援です。

現在、紛争や気候変動による災害などが理由で短期間の間に急激な食料不足が生じており、急性飢餓に陥る人の数は1億9,300万人にも達しています。一例として、過去40年間で最悪の干ばつに見舞われた東アフリカのソマリアでは、人口の実に2人に1人が急性飢餓に直面しています。何十万人もの人々が食べ物を求めて家を離れ、支援機関が提供する水や食料で命をつないでいるのが現状です。

ソマリアなどで飢餓に直面している人々に対して、ワールド・ビジョンはクリスマス募金で集まったご寄付を活用して次のような支援を行っています。
  • ・必要なカロリーやビタミン、ミネラル等が配合された栄養補助食の配布などを通じて子どもたちの命を守る
  • ・現金やバウチャーカード(引換券)を配布し、人々が必要なものを入手できるようにする
  • ・収入向上や栄養改善を促す能力強化研修を実施し、持続的に食料を調達して、よい栄養状態を保てるようにする

チャイルド・スポンサーシップ

ソマリアと同じく深刻な飢餓に直面しているエチオピアは、ワールド・ビジョンの継続寄付プログラム「チャイルド・スポンサーシップ」による支援国のひとつです。

エチオピア北部に位置するゴンダール・ズリア地域開発プログラムでは、多くの住民が農業や牧畜で生計を立てていますが、灌がいが普及していないため、6~8月の雨期以外の時期は収穫が少なく、食料不足が深刻です。ワールド・ビジョンはここで近代的農法についての技術研修や灌がい用水路などの設置支援を行っているほか、収入向上を図るために小規模ビジネスや貯蓄・借入方法についての研修も実施しています。

ワールド・ビジョンは、エチオピアを含む世界21カ国でチャイルド・スポンサーシップを通した支援を実施。このプログラムの中心的な働きのひとつに、飢餓の撲滅につながる栄養改善が含まれています。

2022年4月に刊行した書籍『いのちのバトンをつなぎたい 世界の子どもの3人に1人は栄養不良』は、栄養不良の問題を通して世界の課題を捉え、今できることを考える国際協力の入門書。ワールド・ビジョンが支援国で出会った子どもたちの生活を紹介しています。

チャイルド・スポンサーシップへの募金にご協力ください

チャイルド・スポンサーシップを通して支援を受けるウガンダの子どもたち。保護者にむけて栄養ある食事の作り方の研修も実施しています
チャイルド・スポンサーシップを通して支援を受けるウガンダの子どもたち。保護者にむけて栄養ある食事の作り方の研修も実施しています

チャイルド・スポンサーシップは、月々4,500円、1日あたり150円の継続支援です。

チャイルド・スポンサーになっていただいた方には、支援地域に住む子ども、"チャイルド"をご紹介します。支援金はチャイルドやその家族に直接手渡されるものではなく、子どもを取り巻くコミュニティ全体に働きかけ、長期にわたりコミュニティに寄り添い、持続可能な活動を展開しています。

チャイルドは、皆さまと1対1の関係を育み、支えられていく存在です。支援地域がどのように発展し、チャイルドがそこでどのように成長しているかという支援の成果を、毎年お送りする「プログラム近況報告」と、チャイルドの「成長報告」を通じて実感していただけます。

子どもたちが飢餓にさらされることなく健康で安全な環境で育ち、教育の機会を得て未来に夢を描けるように、チャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。

今あなたにできること、一日あたり150円で子どもたちに希望を。

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