シリア危機から7年 ~がれきと化した街で子どもの目に映るもの~

(2018.3.12)

がれきの前に立ちすくむ、この子の目に映る未来は...


2011年にシリアの政府軍と反政府軍による武力衝突が本格化してから、まもなく7年。長期化するシリア紛争はさらに深刻化し、これまでに人口の半分以上が難民・避難民となっています。この危機的な状況の中、子どもたちはどのような生活を送っているのか、そしてワールド・ビジョン(WV)はどのような支援を届けているのかを、現地の様子を交えて報告します

現在も続く、シリアの過酷な現状

2011年3月15日にシリア各地で始まった反政府デモがきっかけとなり、シリア政府軍と、反政府勢力の間に衝突が発生。過激派武装勢力なども加わり、大きな武力衝突に発展しました。2016 年12 月には、アレッポをめぐる攻防が発生。政府軍による市民の殺害、拘束、強制徴兵などの暴力と恐怖が、子どもたちとその家族を襲い、発生後わずか1週間のうちに、3 万人以上の人々が避難民となりました。2017年には、停戦合意の発効や緊張緩和地帯創設など、紛争終結に向けたプロセスがいったん本格化したものの、2018年1月にはトルコ軍がシリア北部への攻撃を開始し、2月にはシリア政府軍による空爆が激化するなど、再び大きな衝突が発生しています。

さらに7年という長期におよぶ紛争により、人口の半分以上が難民・避難民となりました。500万人以上が難民として国外へ逃れ、600万人以上がシリア国内で移動を余儀なくされ、現在も避難民として生活を送っています。シリアの状況は過酷です。世界銀行によると、GDPは紛争開始前の2011年から2015年の間に63%減少し、今、シリア人の10人に6人は深刻な貧困状態にあると推測されています。

爆撃の凄まじさを物語るアレッポ東部の様子(2016年)

真冬の寒さでの過酷な日々


シリア
内戦から逃れた子どもたちとその家族が多く暮らすヨルダンに、厳しい冬の寒さが再び襲っています。
特別な許可を取らない限り、正規な仕事に就けないシリア難民にとって、冬は、農業や建設業が限定的になるため、安い非正規な仕事が少なく、収入が減少します。

さらに、65万人を超えるシリア難民を抱えたヨルダンでは、家賃や水道光熱費、食費などの高騰が続き、シリア難民にとっても、ヨルダン人にとっても、生活は困窮を極める一方です。


両親がいない兄妹。1 つしかないブーツを妹(右)に履かせてあげるため、サンダルで雪の中を歩くお兄ちゃん(左)

子どもたちの未来のために ~WVJのシリア難民支援~


国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンは、65万人以上のシリア難民を受け入れているヨルダンで、2014年から教育支援事業を実施しています。長期間学校に通えなかった子どもたちが、ヨルダンの学校の授業に追いつけるよう補習授業を実施するとともに、レクリエーション活動を通して、紛争のトラウマや避難生活によるストレスを和らげる活動も行っています。また、保護者が経済的困窮を理由に子どもに労働や早婚を強いることがないよう、教育の重要性を呼びかけています。

支援の背景:増える難民児童に対して、教室の不足が続く

公立学校では児童数の増加に対応するため、朝・昼の二部制を導入し授業時間を短縮していましたが、学力が身につかず退学してしまう児童も多く、そのような子どもたちが児童婚や児童労働などの危険にさらされていました。また、紛争の経験や厳しい避難生活により、不安やストレスを抱えて過ごす子どもも多くいます。

支援の成果:ストレスを和らげる支援を進めています

今年も多くのシリア難民が暮らすヨルダン北部の都市イルビドとザルカで、シリア難民と地元のヨルダン人の子どもたちを対象に補習授業を実施しました。参加した子どもたちは、紛争で学校に行けなかった期間の学習の遅れを取り戻せたなど、着実に学力を向上させることができました。

数値で見る成果(2017年度)

  • 補習授業に参加した子どもの数:720人
  • 補習授業を行う教室を整備した学校の数:5校
  • 保護者会への出席数:のべ820人
  • 補習授業運営のための研修を受けた教員数:30人




補習授業を受けるシリア難民の子どもたち

勉強のおもしろさに目覚め、将来の夢が持てました!

【支援地からの声】

ワールド・ビジョンが運営する補習授業では、平日の学校の授業が始まる前にアラビア語、英語、算数の補習を受け、授業の終わりには絵を描いたり簡単なスポーツをしたりしています。補習授業を受けてからは計算もできるようになって、算数のおもしろさに目覚めました。ほかの科目の成績もうんとよくなり、それが自信にもつながっています。将来の夢はお医者さんになること。実現するために頑張って勉強するつもりです。

シリアから避難してきたブシュラさん(13歳)


厳しい冬も、温かく過ごすことができました

【シリア難民越冬支援報告】

シリアのアレッポからヨルダンに避難しているファティマさん(写真左)は、夫と9人の子どもたちと、2部屋しかない家で暮らしています。厳しい冬の寒さをしのぐため、以前は近所の人たちに頭を下げて古着を分けてもらっていました。しかし、防寒着の支援を受け、子どもたちに新品の上着を着せることができました。暖房用ガスボンベの提供も受け、「今年は温かく過ごせます」と喜んでいます。

支援で受け取った上着を娘に着せるファティマさん

シリア難民支援募金にご協力ください

今、手を差し伸べることで、子どもの未来が変わります。

今すぐ募金

ページトップアイコン「シリア危機から7年 ~子どもの目を通して見る現実~」トップへ戻る