【報告】高校生が難民の子どもたちに「歯を守る授業」を実施

(2020.03.27)

「未来ドラフト2019~わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション~」でグランプリを受賞したチーム「チェカチェカ」が、2020年1月4~13日、ウガンダ北部にあるビディビディ難民居住地(以下、ビディビディ)に渡航し、「難民の子どもたちの歯の健康を守る授業」を実施しました。その報告会を2月15日(土)開催し、同行した歯科医師からの専門的な報告や高校生・大学生の視点で感じた「難民問題」や今後の取組みについて約30名の来場者とともに考えました。

以下、「チェカチェカ」からの報告です。

「難民の子どもの歯を守る授業」内容

【授業実施期間】2020年1月7~9日
【対象】9~14歳の南スーダン難民の子どもたち。1授業あたり約40名。
【場所】ワールド・ビジョンが運営する3つのチャイルド・フレンドリー・スペース (以下、CFS: Child Friendly Space)
【内容】
・紙芝居を使った「歯磨きとは?」の説明
・歯科医師による簡易診察
・ニームの木を使った歯ブラシ制作(ニームの木:現地に生えている消毒作用のある木)
・プラークチェック
・歯ブラシ指導
・歯ブラシ保管用「紐」配布
・記念撮影

プロジェクトの成果

【授業を受けた子どもの人数】約300名
【啓発内容】歯磨きの重要性、正しい歯磨きの仕方、歯周病の説明
【ビディビディ初の口内データ取得】約79名に簡易診察実施
【インタビュー】11人の難民の子どもたちにインタビュー実施
【訪問】10代で妊娠・出産した女の子(シングルマザー)の家へ訪問/インタビュー実施、International Rescue Committee (IRC) 訪問/医療従事者へのインタビュー実施

教室の収容可能人数を大幅に超えた子どもたちが集まり、入れなかった子どもたちは窓から覗き込んで熱心に授業を聞いてくれました。また、子どもだけでなく、CFSのセンター長、教員、ワールド・ビジョン・ウガンダのスタッフ、お世話をしてくれたドライバー兼ガイドさんも興味津々でした。

3日間を通して約300名の子どもたちに歯磨きの重要性、正しい歯磨きの仕方、そして歯周病の説明を実施することができました。また、歯科医師による簡易診察を79名の子どもに実施し、ビディビディ初の口内データを取得することもできました。

また、11人の難民の子どもたちにインタビューを行い、「今、困っていること」「将来の夢」などを聞きました。その他、現地で医療支援を行っているNGOや難民高等弁務官事務所への訪問も行い、<難民支援>を多方面から学び、理解を深めることができました。

口内データのまとめ

【口内診察を受けた子どもの数】79人
【虫歯の総数】41本
【虫歯があった子どもの数】25人
【DMFT指数】0.51
*DMFT (Decayed, Missing, Filled Teeth)指数: 1人平均虫歯指数
*参考:日本の12歳児のDMFTは0.7 (令和元年度の文部科学省学校保健統計調査(歯科部門抜粋)より)
【永久歯で虫歯の数】26本
【乳歯で虫歯の数】15本
【歯科医師の考察】歯磨きの歌が歌われていたことなどから歯磨きに対する意識の高さは伺える。また、ミネラルや食物繊維が豊富な食事、ミネラル豊富な井戸の水は歯を強くするためその影響も大きい。しかし、歯磨きの意義や正しい磨き方は認知されておらず、年齢が上がるにつれて歯周病の危険が高まる可能性があると言える。

プロジェクトを実施して気づいたこと

・一番驚いたのは、難民の子どもたちに歯磨きの習慣があったことではなく、インタビュー内容でもなく、圧倒的な資金不足による支援団体の撤退、現地スタッフの解雇の現実。世の中の関心が低く、支援金が足りないことが原因と知ると、「自分たちのせいじゃん」とダイレクトに感じた。「難民の人たちが苦しんでいる理由は自分たちだった」というショックが凄まじく大きい。


・シリア難民も南スーダン難民も、地理的な距離としてはあまり変わらないと思うのに、なぜ関心に差があるのか分からない。メディアの影響が思っているより大きいのかもしれない。


・難民問題に関わらず、世界のどこかで問題が起きてそのニュースが流れたときに、「そうなんだ」で流して、自分の関心ゴトだけに絞って、情報を精査している。その当たり前にしている自然な行為が、現地でどのように影響しているかまでは想像できていなかった。話題として盛り上がり続けないと、現地の人たちの生活は良くならない。興味なくても、興味持つべき。

・生きてきた中で今まで関わったことのない分野だった。考えたこともなかった問題に対して18-19歳が取り組んでいることに感動していたら、自分が勤める院の院長がチャイルド・スポンサーだった。現地に再び来ることはないかもしれないけど、日本で続けられることは続けたい。お世話になった現地のワールド・ビジョンスタッフさんたちが解雇されることに、涙が止まらなかった。
現地を見ると、支援を縮小していい状況では全くない。緊急支援から開発支援に移行する段階なのであれば、もっと早く、すべての分野で入って欲しい。縮小はあり得ない...とてもつらい。

・ワールド・ビジョン・ジャパンや現地スタッフの優秀な働きを間近で見て、感動した。感動したりインスパイアされてもそれが長続きしなくて忘れてしまう自分が嫌だったけど、"children first" というワールド・ビジョンのマインドを目の当たりにして、考える暇あるなら行動しようと思った。クラウドファンディングを通して、伝える難しさや経済的支援を求める難しさを体感したけど、ごちゃごちゃ考える前に行動しようと思った。難民の子どもたちと交流するのと同じぐらい、プロの人道支援者の働きを間近でみれたことは、私にとって life changing だった。

授業に使用する鏡を現地で購入するのも一苦労でしたが良い経験でした
17歳で妊娠し、教育を諦めざるを得なかった女の子の家を訪問しインタビューさせていただきました
同じホテルに宿泊していた他団体の日本人の方と一緒に夕食をし、色々なお話を聞くことができました

関連リンク

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