連載①自然災害に負けない支援を目指して

2015.03.14

「防災・減災」で子どもたちを守る

東日本大震災から4年。災害時に被害を出さないようにする「防災」とともに、防ぎようのない被害を最小限に抑えるための「減災」が、今までにも増して世界的に注目されています。ワールド・ビジョンは、干ばつ、地震、台風、洪水などの様々な災害を前もって想定し、そのリスクに備えて子どもたちを守る「防災・減災」の活動に力を入れています。

皆さまからの尊いご支援で行われた活動の成果が、自然災害によって損なわれるのを防げるように、そして、子どもたちの成長するコミュニティが自然災害に対応する力をつけ、被災してもその後に回復できる強さを育むことを目指しています。ワールド・ビジョンの支援活動にとって「防災・減災」は必須の要素で、緊急人道支援はもちろん、チャイルド・スポンサーシップによる支援においても、次の3原則による活動を行っています。

① コミュニティが抱える脆弱性を減らす
② 災害がもたらす危険を緩和する
③ コミュニティが災害に対応できる力を育てる

干ばつ発生後、人々が移動して村がなくなってしまったため、学校も閉鎖となり教育を受けられなくなったモハマド君(10 歳)。

これらの原則が、どのように支援地域で生かされているか、ソマリア、ウガンダ、エクアドル、そしてフィリピンの活動事例を通して、3回にわたりご紹介します。

【第1回】 コミュニティが抱える脆弱性を減らす~ソマリアの事例より~

ソマリアは、東アフリカに位置し、人口956万人の約60%が家畜の生産に依存している。内戦や無政府状態が続いた結果、インフラや社会サービスは現在も皆無に等しく、人道的なニーズが非常に高い。国連が定める最貧国のひとつです。

ソマリアでは、近年の気候変動に伴い、頻繁に干ばつが起こっています。2011年の東アフリカ大干ばつの時には、食料を求めて約90万人が周辺国に難民として逃れたほか、数万人の餓死者が出たと報じられました。本来は厳しい気象条件の中でも生き抜いてきた人々ですが、災害が短い間隔で発生するため、被災から回復できずまだ弱っている状態で次の災害を迎える、という悪循環に陥っています。

ソマリアでは20万人以上の子どもが栄養不良と報告されています。ワールド・ビジョンは栄養不良を改善するための支援を継続すると同時に、干ばつ等の自然災害に人々が対応できる力を高めるための支援を実施しています。

栄養状態の診断を受けるジャマ君(2 歳)

7つの国際NGOが共同事業で対応

ワールド・ビジョンなど、ソマリアで5年以上活動している国際NGO7団体は、この悪循環に対応するためには、短期的な救命や食料支援にとどまらず、中長期的にコミュニティの力を育成することで、人々が干ばつから受ける負の影響を少なくする、つまり、コミュニティの脆弱性を減らすための支援が必要という合意に至り、共同事業を実施しています。

弱い立場の人も、最低限の食料は手に入れられるように

■道路を整備し、収入を手に

市場にアクセスするための道路や、灌がい施設等を整備する作業に参加する人々に対価を支払うこと(キャッシュフォーワークという支援の方法)で、コミュニティの中でも特に弱い立場の人々(世帯主の女性など)が収入を得て、災害発生時に備えることができ、同時にコミュニティのインフラも整備される、という活動です。

年間を通じて食料危機が発生しやすい乾期でも、収入を得られることで食料を入手できる可能性が高まります。

市場までの道路を整備する女性たち

■「これで孫たちに十分に食べさせてあげられる」

そう語るのは、「シェア・クロッピング制度」の導入によってできたグループのメンバー、イジャボさん。

「シェア・クロッピング制度」とは、土地を持っていない人々が土地所有者の畑で耕作できるようにする仕組みです。 この制度の導入後、耕作で得られる取り分が、それまでの収穫量の3分の1から、3分の2へ増加しました。イジャボさんは、入手できる食料がこれまでの2倍に増え、7 人の孫たちに十分に食べさせることができるようになったのです。

土地所有者はより良い農法についての研修を受講するとともに農具や種子の支援を受けました。土地所有者と土地を持っていない人、それぞれが力をつけ、コミュニティとしての対応力が育っていくように、今後も支援を続けていきます。

シェア・クロッピングに参加したイジャボさん