【南スーダン】危機を食い止めるため、求められる人道支援

(2016.8.3)

480万人以上が急性栄養失調に

南スーダンでは、独立5周年を迎える前夜の7月8日より、キール大統領派の政府軍とマシャール前副大統領派の反政府勢力の間での衝突が再燃し、兵士150人が死亡する戦闘が発生しました。
同国は40年以上に渡った紛争後の2011年7月9日にスーダンから独立を果たしましたが、独立後もキール氏とマシャール氏の対立が絶えず、2013年12月には両者の警護隊同士の衝突からそれぞれの出身民族間の抗争に広がり、内戦状態に陥りました。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、これまでに230万人が難民、避難民となっています。

昨年8月に和平合意が締結され、今年4月に暫定政権が発足し、復興への前進が切望されていた中での今回の衝突で、さらに避難民、難民の急増が避けられない状況です。

現在、南スーダンでは極度の食糧危機により480万人以上が急性栄養失調に陥り、深刻な栄養失調で治療を受けている子どもの数は、昨年同時期より40%増加しています(出典:総合的食料安全保障レベル分類, Integrated Food Security Phase Classification, 略称IPC)。ジュバやワウなど都市部では栄養失調により治療を必要としている人が急増しており、このまま治安や経済の悪化が続けばその数は急速に増えると予想されています。

母親に抱かれる栄養失調の赤ちゃん。クリニックの長い列に並んで順番を待ちます

国際社会への提言

南スーダンの何百万もの人々の苦しみがこれ以上悪化することがないよう、戦闘、治安悪化、経済の破綻によっていまだかつてない甚大な被害を受けている子どもたち、家族、地域の人々のためにワールド・ビジョンは国際社会に対して以下のことを求めます(抜粋)

国連安全保障理事会に対して

1. 南スーダンの人々の緊急人道ニーズに応えるため、国際NGOや国連機関が迅速かつスムーズに人道支援ができるよう確保してください

2. 悪化した治安と経済の回復のため、紛争全当事者に対して歩み寄りを働きかけてください

3. 一般市民が食糧や避難場所を求めて移動する(または避難する)ことができるよう紛争全当事者に働きかけてください

ドナー(支援のための資金拠出者)に対して

4. 2016年の南スーダン人道支援対応計画に応じて実施してきた事業に加え、直近の戦闘よる人道ニーズに対する支援を拡充してください

5. 南スーダンの内戦が国内、および隣国にもたらす甚大な影響を理解してください

6. 生計支援や農産物の栽培期間での作付を奨励する施策や支援を支持してください

7. 緊急期における教育や子どもの保護の重要性について理解してください

提言書全文はこちらから(英語)

大勢の子どもたちがわずかな食糧を分け合っている様子

ワールド・ビジョン・ジャパンの活動

ワールド・ビジョン・ジャパンは、独立前の紛争中から長期にわたって南(南部)スーダンの人々のニーズの沿う支援を行ってきました。難民キャンプでの生活支援、水衛生設備、農具や魚網などの配布、教育支援などを幅広く行ってきました。
現在は、南スーダン南西部において教育支援事業を実施しています。
一日も早くこの国が紛争から立ち上がり、一人でも多くの子どもが教育の機会を得て、将来への希望を持って生きられる環境づくりを目指しています。

現在の状況について、担当の中村スタッフが想いを語りました。

「ワールド・ビジョン・ジャパンは、南スーダン国内とエチオピアで難民となって避難している人々への支援を届けています。
多くの人々が一日も早く故郷に戻り、国づくりを担ってけるように夢を持ちつつ望みを繋いで、現在の苦境を乗り越えようと喘いでいる一方で、南スーダンの一部の指導者の間での相次ぐ衝突の再燃により、多くの人々の希望が打ち砕かれ、多くの人々の生活がさらに悪化していることに、非常に心が痛みます。

南スーダンは、今年4月に発足した暫定政権のもと、和平を構築し、復興に向かわなければ経済的にも破綻寸前の状況であったため、この衝突は南スーダンの人々を更に苦しめることは避けらません。今後も、人々の命を守る支援が必要とされており、私たちも事業を展開している地域から、紛争の犠牲となっている子どもたちに寄り添う支援を届けていけるよう努めていきます」

紛争の犠牲になり、平和を知らない子どもたちが、せめて「教育」で未来への希望をつなぐため、募金へのご協力をお願いしています




支援による水浄化システムを使用している様子
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