7月30日は「人身取引反対世界デー」:人間が売られない世界へ

(2016.7.29)

人身取引とは

「人身取引」(人身売買)は「現代の奴隷制」とも呼ばれる深刻な人権侵害であり、国際社会から重要課題として認識されています。強制労働、性的搾取、臓器摘出などによって被害者の権利と尊厳を奪い、肉体的・精神的に深刻なダメージを与えます。

国際労働機関(ILO)の報告によるとその犠牲者は世界でおよそ2090万人と推定されており、麻薬密輸、違法武器取引に次ぐ地球上の犯罪トップ3となっています

「人身取引反対世界デー」は、このような非人道的行為が世界に蔓延していることを啓発し、被害者の人権を守るための行動を呼びかける日です。現状を知った一人ひとりのアクションがこの非人道的行為に終止符を打つ第一歩になります。

人身取引反対世界デー5回も人身取引の被害にあったカンボジアに住むカーさん

「まず、知ることから!」ユース向けイベント開催報告

これから世界に出て行く若者の皆さんに人身取引について知ってほしい、との願いから、7月23日(土)、28名の中高生を迎えてのイベント、ユースプログラムを開催しました。カンボジアに駐在し、人身取引対策の現場で働いてきた池内スタッフの講義では、具体例を交えた説明に、参加者の顔が引き締まりました。

人身取引の登場人物になりきってその仕組みを学ぶロールプレイや、問題を広く知ってもらうための動画制作等を通じて、参加した生徒たちは楽しみながら問題への理解を深めました。

講師役で参加した池内スタッフはこう語ります。

「参加者の皆さんが、自分のこととしてこの問題を考える姿に励まされました。1日のワークショップのまとめとして出たメッセージは、『まず、知ること』。知ることで、行動が変わってきます。この問題が、少しずつ日本社会にも浸透していくことを願っています」

ユースプログラムプログラムの終わりに一人ひとりの想いを文字にしました

日本にとっての「人身取引」

日本は、人身取引の被害者が「送られる国」であり、被害者の「供給・通過国」であると人身売買報告書2016*で発表されています。

外国人労働者に対する不当な強制労働、児童ポルノの供給、JK(女子高生)ビジネスなどが指摘され、G7(日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの7つの先進国)の中で「唯一最低基準を満たしていない国」と低い評価を受けています

*人身売買報告書:米国務省が世界188カ国・地域を対象に、人身売買や強制労働などの実態を調べ、4段階にランク付けし毎年発行している報告書

秋葉原日本各地でJKビジネスが行われています

人身取引をなくすために -ワールド・ビジョンの活動-

ワールド・ビジョンではメコン拡大地域*における人身取引対策事業を2011年10月から2016年6月まで行ってきました(End Trafficking in Persons 英語サイト外部リンク)。

被害者の保護、安全な移住、政府への働きかけ、など「人身取引」の被害にあった生存者を支援することを目的として、5年間で421人の被害者に支援を届けました

2016年10月からは同じメコン拡大地域を対象に、人身取引含め、児童労働や早婚の予防など「子どもの保護」に重点を置いた事業を行う予定です。

*メコン拡大地域:カンボジアラオス、中国、ミャンマータイベトナム

寄り添う支援性的搾取の被害にあったマオさんの心のケアを行うスタッフ。トラウマからの回復に17カ月かかりました

政策提言活動を行っています

ワールド・ビジョン・ジャパンは、日本政府や関係諸機関に対し、メコン拡大地域での人身取引対策事業の成果や具体的な事例を踏まえた政策提言を行っています。

日本は、メコン拡大地域と深い経済的なつながりをもつ国です。ワールド・ビジョン・ジャパンは、日本政府に対し、その経済的な支援額に見合った規模の人身取引対策支援や、被害者に寄り添ったきめこまやかな支援策、また人権に配慮した責任ある企業活動を可能にする法的枠組みなどを求めています。


人身取引は、どこか遠くの国の問題ではありません。人身取引によって工場や漁船での強制労働に従事している人々がアジアには数多くおり、その手で作られた製品を、私たちは消費者として手にしているかもしれないのです。

一人ひとりのアクションと、政策レベルでのアクションを通じて人身取引に終止符を打てるよう、これからも取り組みを続けていきます。

伊勢志摩サミット伊勢志摩サミットでも、ビジネスの現場が利益追求のあまり児童労働等の搾取を行わないよう提言しました

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