A Brighter Future

南スーダンの子どもたちが、苦難の経験や希望への想いを、絵を通して表現

世界で最も新しい国で暮らす子どもたちが、残酷な内戦により、苦しい生活を強いられています。2013年12月以来、およそ90万人もの南スーダン難民が、世界の中でも最も革新的な難民政策をとっている国、ウガンダに逃れています。

ウガンダは、国境を開き、難民家族への土地提供、仕事や起業の機会、健康管理や教育などの公共サービスを受ける権利を与えることを確約しています。しかし、ウガンダは、この危機に対応するために必要な資金の15-16%しか保有していません。その結果、食糧供給量は削られ、子どもたちは暴力や搾取に対して、ますます脆弱な状態に陥っています。

ウガンダ北部のビディビディは、現在世界最大の難民居住地になっています。そこで暮らす人の68%は子どもたち、その多くが恐怖におびえている身よりのない子どもたちです。非人道的な暴力を目撃、経験しています。

アパーシャル(Apartial)という、現代アーティストたちが集まるネット上のコミュニティが、難民居住地の子どもたちを支援するべく立ち上がりました。Maser、 Herakut、JR、 Seth、 Candy Chang 、Sandra Chevrierなどの世界的に有名な現代アーティストたちによる作品を、子どもたちが模写することを通して、彼らが歩んできたストーリーや未来への想いを表現しています。

このプロジェクトは、暗闇に、色や希望をもたらしています。

「ここにあるたくさんの輝く色は、『私たちの未来も明るくなれるかもしれない』と、元気づけてくれます」マーガレットちゃん(16歳)

「アートは道具だ。会話や新しい経験を生み出す力を持つ」-Maser

16歳のリナちゃんは、カナダのアーティスト、Sandra Chevrierの「か弱い英雄たち」シリーズのスタイルで、自画像を描きました。

南スーダンの首都ジュバで戦闘が激しさを増し始めた時、リナちゃんとお父さんはウガンダに逃げることを決めました。翌朝、リナちゃんは荷作りをし、お父さんを起こしに寝室へ向かうと、荒らされた寝室の中で、屋根の垂木から吊るされているお父さんを見つけたのです。

「私は、なぜ、誰が、お父さんを殺したのか分かりません。部屋の中のすべてが破壊されていたので、私は泥棒の仕業だと思いました。私は、何も履かずに、走って逃げました」

隣人の1人が、ウガンダのビディビディ難民居住地に向かうバスにリナちゃんを乗せました。彼女は8月以来、1人でそこで暮らしています。

2013年12月以来、約90万人の南スーダン人がウガンダに逃れています。その59%が子ども、多くがリナちゃんのように、身寄りのない子どもです。

「たった1人での生活は、とてもつらい。2人だったら、耐えられるかもしれないけど、私は1人。勉強したいけれど、過去のことを考えると混乱するの」

リナちゃんは、SandraChevrierの作品に引き付けられ、手法を真似て、すぐに描きはじめました。

まず、リナちゃんの顔をアップで撮影、それを壁に投影し、輪郭を描き、アパーシャルの指導の下で、彼女は女性英雄たちを描きました。

「私はこの絵が大好きです。だから、どうしても自分で色をつけたかったの。作業している間、私はとても楽しくて、過去のことは考えませんでした」

リナちゃんは、今、アメリカのどこかにいる彼女の唯一の肉親、お兄ちゃんのジュディスくんと再会することを夢見ています。

「お兄ちゃんは、とても優秀でした。カンパラ(ウガンダの首都)の奨学金試験に優秀な成績で受かったので、アメリカの婦人が彼に資金援助をしてくれたのです。ここへ来る間に、お兄ちゃんの電話番号とEメールアドレスを失くしてしまいました」

12歳のジョンくんは、いつか母国の大統領になると、固く決意しています。彼は、フランスのストリート・アーティスト、Sethによって描かれた、明るい未来に希望を抱いている少年の絵を模写しました。

時々、精神年齢が実年齢よりも高く感じる子どもがいますが、ジョンくんもその1人です。彼は、心から嬉しいと思った時か、本当に面白いと思った時しか笑顔を見せません。また、主張がある時にしか口を開きません。

ジョンくんは、1人でビディビディ難民居住地にいます。彼の村で戦闘が勃発し、家族と急いで逃げようとした際、混乱の中で両親と3人の兄弟姉妹と離れ離れになってしまったのです。

「ぼくは、死体を飛び越えました。燃える車や銃撃を目にしました。ぼくは命がけで逃げました。誰のせいか、なぜ彼らがそんなことをしているのか、ぼくには分かりません。身体を切断された子どもたちから、血が流れていました。手足を切られた子どももいました。虐殺された人の数は、途中で、分からなくなりました。時々、彼らは夢に出てきます」と、ジョンくんは話します。

ジョンくんは、ウガンダに向かうバスに飛び乗りました。自分の家族が生きているかは、いまだに分かりません。

ジョンくんは、気持ちを紛らわすために、勉強とサッカーに励んでいます。「毎晩、自分のテントに戻って1人になると悲しくなり、家族はどこにいるのだろう、と考えます」

将来への希望について聞かれたジョンくんは、「ぼくは南スーダンの大統領になる」と自信を持って答え、統一と平和、男女平等、就学率向上への想いを話しました。

「人は、互いを自分の兄弟姉妹と考えなければいけない。もし意見が異なるなら、対話で解決しなければならない。ぼくは、すべての子どもたちに、学校給食を約束します。食糧なしに学ぶことはできないからです。また、親は娘たちを学校に通わせなければなりません。南スーダンでは、息子たちが優先的に学校に通いますが、それは正しくありません。女の子も、男の子と同じ権利が約束されるべきです。」

また、経済開発向上のための農村地域でのインフラ整備も、優先事項として挙げていました。

ヴィオラちゃんは、16歳にして、妻であり母親です。南スーダンの紛争により、彼女は余りにも速く大人になることを強いられました。

ヴィオラちゃんの両親は、町に行く途中にナタで攻撃され、虐殺されました。通りがかりの人が、父親が持っていた携帯電話を拾い、それで家族に悲報を伝えました。

ヴィオラちゃんは残された4人の子どもの中で、最年長。両親が亡くなった時、幼い弟は生後わずか18カ月でした。母親の遺体を埋葬しようとした時、この弟が母親の体にくっついて離れようとしなかったことをヴィオラちゃんは覚えています。「弟は、母親が1人ぼっちなることを嫌がり、母親について行こうとしたのです」

ヴィオラちゃんは、弟や妹たちの世話をするのは、自分の責任だと感じました。20代の男性がヴィオラちゃんに結婚を申し入れた時、彼は、弟や妹たちの面倒を叔父が見るために必要な結婚持参金を支払う約束をしました。彼女は、自分には結婚する以外の選択肢はない、と感じました。

ヴィオラちゃんは、「両親はこんな結婚は認めなかっただろう」と話します。「両親は、私のことを心から愛してくれていました。結婚した時、私はとても若かったのです。私はあの条件のために、結婚をしたのです。両親は、『お前はまだ若いのだから、学校に行って勉強をしろ。そうすれば、将来、人の役に立てる人間になれる』と言っていました。お医者さんになるのが私の夢でした」

ヴィオラちゃんが妊娠9カ月の時、彼女と夫は生まれ故郷であるイェイでの暴力が激しくなったため、ウガンダに逃れることを決意しました。「私は、とても多くのことを目撃しました。人殺したちは、どんな例外も認めませんでした。足の不自由な人、老人、子ども、妊婦すら殺害しようとしました」

2016年9月、ビディビディ難民居住地に着いて間もなく、娘のマリーが生まれました。ヴィオラちゃんは誰の助けもなく、1人で出産しました。

彼女の夫は、難民居住地での生活に適応できず、2017年2月に、「南スーダンに戻る。マリーの養育費は送金する」と言い、いなくなりました。それ以来、夫との音信は途絶え、ヴィオラちゃんは生活ができなくなりました。そこで、ヴィオラちゃんは、赤ちゃん用品を買うために毎月の配給食料の半分を売っています。彼女は、次の配給があるまでの約15日間、空腹を強いられています。

「ここは、銃撃がないので安心です。でも生活状況は、悲惨です。私には頼る人が誰もいないので、病気になることが怖いです。私にはお金がありません。もしマリーが病気になったら、誰が助けてくれるのでしょう?私はマリーが病気にならないように、いつも神様にお祈りしています」

ヴィオラちゃんは、ドイツのアーティスト、Herakutの「あなたは、次の世界の王様を育てているかも」を描きました。

子どもたちが安心できる居場所を

ワールド・ビジョンは、毎日100人の身寄りのない子どもたちが、なんとか紛争から逃れるために、南スーダンの国境を越えてウガンダに辿り着いていると推定しています。しかし、それだけでは彼らの安全は保証されません。

「脆弱な女の子たちは、生き残る方法として早婚を選んでいる。ここではそれが主流となっている」と現場のスタッフは話します。

身寄りのない子どもたちを早婚やあらゆる形態の暴力から守るため、ワールド・ビジョンは、難民居住地内で、一時的な里親制度を整えました。これまでに2,700人を超す子どもたちが、里親を希望する居住地内の難民家族と暮らしています。

また、3つの居住地にわたって26のチャイルド・フレンドリー・スペース(CFS)では、52,000人の子どもたちのために活動しています。CFSは子どもたちが心理的ケアを受けながら、安心して遊び、学べる場所です。また、居住地内の暴力を早期発見したり、弱っている子どもを保護する役割も果たしています。

ワールド・ビジョンは、13,500人の南スーダンの子どもたちに平和教育を提供しています。また、太陽電池式のプロジェクター「デジスクール(DigiSchool)」を導入し、学習プログラムやオフライン・ウィキペディア、安全や平和構築に関するビデオにアクセスできるようになっています。

#ABrighterFuture

南スーダンの子どもたちは#ABrighterFutureを求めています。