世界では4秒に1人の子どもが命を落としています。90秒に1人の女性が妊娠・出産で命を落としています。
その99%は途上国に住む女性と子どもたちです。
5歳未満で亡くなる子どもたち
2010年の1年間で、760万人にのぼる子どもたちが、5歳の誕生日を迎えることなく世を去りました。
その中の約3分の2の子どもたちは、予防・治療可能な要因により命を落としています。
そして、約半数の子どもたちは生後1カ月まで生き延びられません。
5歳未満で命を落とす子どもの半数は肺炎、下痢、マラリアなどの防ぐことができる病気が原因で亡くなっています。
また、子どもたちの死亡の3割は、直接的・間接的に栄養不良が原因となっています。
5歳未満で命を落とす原因
助産師の立会いのもと、元気な男の子を出産したハリモさん。世界では、毎分1人の女性が、妊娠や出産で亡くなり、毎日1万人の赤ちゃんが、生後1カ月を迎えることなく世を去っています。
(ソマリア)
多くの命は救えるはず
家族とコミュニティで可能な「予防」と、基礎的な「治療」の提供があれば、
子どもたちの命を救うことはできるはずだと言われています。途上国で生まれる子どもは先進国の子どもと比較して、
生後1カ月間に死亡する確率が、約14倍も高くなっています。妊産婦が適切なケアを受け、安全な出産をできるようになることで、
数百万人の赤ちゃんが元気に生まれてくることができるでしょう。
これまでの様々な調査と経験によると、
すでに実践されていて効果があるとわかっている方法を確実に行えば、乳幼児死亡の60%、妊産婦死亡の75%までを防ぐことができるとされています。
妊産婦健診をする助産師のルースさん
(ザンビア)
お金をかけず、簡単な方法で子どもたちを救うことができます
これまでの成果から、比較的低価格で簡単な手段が子どもの命を救うことに有効であることがわかっています。
以下に紹介する5つの方法で、5歳未満で亡くなる約600万人の子どもたちを助けることができると言われています。
下にある画像もしくはテキストをクリックすると、詳しい方法が表示されます。
例えば、モザンビークでは、マラリアは5歳未満の子どもたちの命を奪う最大の原因です。モザンビークにある10州の内8州では、子どもたちが命を落とす要因の25%がマラリアです。
雨季に加えて、沼地や川は、マラリア原虫を媒介する蚊にとって絶好の繁殖環境です。モザンビークでのマラリアの罹患率が高いのは、貧困により教育レベルが低く、マラリアに罹患してしまった場合の迅速な治療や長期的に効果のある防虫蚊帳が不足しているためです。
長期的に効果のある防虫蚊帳の普及は、安価で簡易な解決策の1つです。マラリア原虫を運ぶ蚊は、多くの場合、夜に活動します。蚊が防虫蚊帳に接触すると、蚊は即座に死んでしまいます。大多数の家庭で防虫蚊帳が普及すれば、多くの子どもたちの命を救うことができるでしょう。
タンザニアで実施された研究によると、村民の75%がこの蚊帳の下で眠れば、マラリアよって命を落とす子どもの数は、蚊帳を使用している家庭で98%減少することが証明されています。村での蚊帳の使用が広まれば、蚊帳を使用していない家庭でも、マラリアによって命を落とす子どもの数を90%減少させることができます。
ワールド・ビジョンは、マラリアについての教育を行ったり、長期的に効果のある防虫蚊帳を配布し、多くの家族をマラリアから守る活動を行っています。また、コミュニティのボランティアにより構成された保健協議会が、演劇や家庭訪問を通じて近隣の住民たちにマラリアの危険性、予防策や治療方法を知らせています。
保健協議会は、親たちにマラリアの症状を教えることにより、子どもがマラリアにかかった際には、早急に治療を受けることの大切さを伝えています。
※「子ども」とは、5歳未満の子どもたちのことを指します。
世界では、約5人に1人が5歳未満で下痢により命を落としています。
つまり、エイズ、マラリアとはしかが原因で亡くなる子どもの数を合わせたより多くの子どもが、下痢により命を落としています。
そして、下痢で命を落とす子どもの46%がアフリカに住んでいます。
アフリカ、ザンビアのリチャード君とロデリック君という双子も下痢にかかり、ひどい脱水症状になりました。
「このままでは、2人とも死んでしまう」と思ったお母さんは、2人を村の診療所へ連れて行きましたが、
診療所にあった経口捕水塩は1人分だけでした。
経口捕水塩を飲むことができたリチャード君は助かりましたが、
ロデリック君は亡くなりました。「ザンビアでは多くの子どもたちが下痢にかかるため、
経口補水塩などの薬がすぐに底をついてしまいます」と、診療にあたった医師のジョセフ先生は、
ザンビアで経口補水塩などの医療品が不足している状態を説明します。
ペットボトル1本の金額で、経口捕水塩6袋が購入できます。
この低価格で使用方法も簡単な経口捕水塩の支給ができないため、
ロデリック君のような子どもたちが、治療できるはずの病気と闘うことができず、
命を落としています。そして、安全な水へのアクセスを確保できれば、
毎年150万人の子どもたちの命を救うことができます。
多くの家族やコミュニティは、
集めてきた水を飲む前に煮沸するだけで下痢の予防ができることを知りません。
※「子ども」とは、5歳未満の子どもたちのことを指します。
完全母乳による授乳というシンプルな解決策により、子どもの栄養不良の問題を激減させることができます。
完全母乳の授乳というのは、乳児を生後6カ月まで母乳のみで育てることを言います。
母乳は豊富な栄養、ビタミン、ミネラルや抗体などを含んでおり、乳児の命を脅かす危険な病気と闘うのを助ける効果があります。
生後数カ月を完全母乳の授乳で育てられなかった乳児は、完全母乳で育てられた乳児よりも、
下痢によって命を落とす確率が7倍高くなります。
しかし、生後直後から完全母乳による授乳で育てられている乳児は、
世界でわずか3分の1ほどです。
発展途上国では、母乳の授乳により、感染症を予防することができます。
粉ミルクに使用したり、哺乳瓶を洗浄するために使われる不衛生な水は、下痢や胃腸不良など、
乳児の命を脅かす病気の原因になります。
また、母乳は経済的です。乳児は母乳以外の食べ物や飲み物は必要ではありません。
完全母乳による授乳は、乳児の最初の1000日間、つまり女性の妊娠から子どもが2歳になるまでの間に、
子どもが最も良好な栄養状態を保つために重要です。乳児がこの期間に十分な栄養を得られない場合、
その悪影響は取り返しがつきません。
全ての乳児が生後6カ月間、完全母乳で育てられた場合、
毎年100万人以上の乳児の命を救うことができます。
とくに安全な水や栄養のある食べ物の入手、
信頼できる衛生設備へのアクセスが難しい貧しい地域において、乳児の健康的な成長に必要な全ての栄養分を含んだ母乳による授乳は重要です。
※「子ども」とは、5歳未満の子どもたちのことを指します。
1日1000人の女性が妊娠・出産が原因で命を落としています。
日本の妊産婦死亡率は出生時10万人あたり6人ですが、バングラデシュでは340人にものぼります。
このような状況を改善するために、ワールド・ビジョンは助産師を育成するための研修を行っています。
バングラデシュの首都ダッカから約300キロ離れたコミュニティに住むアクリマさんは、この研修に参加し、助産師として認定されました。
バングラデシュでは、多くの女性が自宅で出産するため、助産師の役割が重要です。
「以前は、麻袋や破れた布の上などの不衛生な場所で、女性が出産していました。
助産師も衛生面を重要視していませんでした。爪を切らず、手も洗わず、
アクセサリーさえも身につけたまま出産に立ち会っていました」と、アクリマさん。
しかし、研修を受けたアクリマさんのような助産師は、出産の場が衛生的でなければならないこと、
母乳による授乳や健診の大切さや、女性がどんな栄養を必要とするかを知っています。
今まで多くの出産を介助してきたアクリマさんは、助産師が果たす役割の重要性について話してくれました。
「助産師は決して簡単な職業ではありません。お母さんと赤ちゃんの2人の健康を診る必要があるからです。」
彼女は、コミュニティの女性と子どものために、助産師としての活動をこれからも続けていきます。
アクリマさんのような研修を受けた助産師により、多くの女性と子どもの命を救うことができます。
※「子ども」とは、5歳未満の子どもたちのことを指します。
下痢やはしかなどの予防可能な病気で人の命が奪われることは、日本のような先進国では少数です。
しかし、アフガニスタンではこれらの病気により多くの人が命を落としています。
アフガニスタンは5歳未満の乳幼児死亡率が最も高い国です。
日本では、出生1000人における乳幼児死亡数は4人ですが、アフガニスタンでは257人です。
出生後1ヶ月以内の乳児は感染症の危険に最もさらされています。
安全な水や衛生設備へのアクセスが制限されていることが、はしかや下痢にかかる乳児が多い原因です。
ワールド・ビジョンは、子どもと妊産婦の命を救うため、出産を控えた妊産婦へのカウンセリング、 出産後の栄養に関する研修、妊産婦健診や予防接種も行っています。
ジーバさんは、アフガニスタンで子どもの予防接種を記録するカードを持っている数少ないお母さんの1人です。
彼女は、ワールド・ビジョンの保健クリニックで、定期的な健康診断を受けています。
ジーバさんの子どものアーシアちゃんも、このクリニックで生まれて以来、
予防接種や健康診断のためにクリニックに通っています。
ジーバさんとアーシアちゃんのようなお母さんや子どもの命を救うためには、
予防接種などの保健ケアと共に教育やコミュニティでの活動を取り入れた長期的な健康管理のプログラムが必要です。
※「子ども」とは、5歳未満の子どもたちのことを指します。
上記の5つ以外にも、子どもたちを救う鍵となる取り組みがあります。
乳幼児死亡の40%は出産時の合併症や感染症によるものですが、妊産婦の健康改善や子どもとお母さんの栄養改善により、
その多くを防ぐことができます。
妊産婦の健康改善
十分に出産間隔を空け、熟練した助産師が出産に立会い、緊急の産科治療が可能であれば、お母さんの命を守ることができると、
実証されています。お母さんと子どもの命は密接に関連しています。
母親を失った子どもは、生後2年以内に命を落とすリスクが、母親のいる子どもの場合と比較して10倍も高くなります。
お母さんを守ることは子どもを救うことにつながります。
お母さんと子どもの栄養改善
栄養のある食事ができるようになったリベルタさんの子ども(ルワンダ)
2歳までに必要な栄養を取れるかどうかは、一生の健康を左右します。この期間に子どもが栄養不良に陥ってしまった場合、その影響は取り返しのつかないものになってしまいます。栄養が十分であれば子どもたちは抵抗力を持ち、病気に打ち勝つことができます。 お母さんが妊娠・授乳中に重要な栄養を取ること、そして、子どもたちが乳幼児期に、成長に必要な栄養価が高く、バランスのとれた食事をできることが必要です。
家族と地域、政府双方に役割があります
家族と地域の力
子どもたちの健康を守るため、子どもたちの家族や地域の人々は大きな役割を果たします。
家族が、子どもを病気から守り、健康を保つことができるよう、知識や情報、必要な手段を手に入れられることが大切です。
政府の役割
幼い子どもたちの命を奪っている要因の多くは、基礎的な保健医療サービスさえあれば予防・治療が可能です。
最も貧しい地域に住む家族にまで保健医療を届けられる公的な保健システム強化が不可欠です。
そのためには、保健医療従事者、施設、医薬品、それらのための資金とシステムを機能させる情報システムが必要です。
国際社会の努力により、多くの子どもたちの命が救われています
下記のグラフの通り、ここ数年で命を落とす子どもたちの数は、確実に減っています。しかし、年間810万人以上もの命が、その多くが救えるにも関わらず、失われています。
「2015年までに5歳未満児死亡率を1990年の水準の3分の1まで削減する」というミレニアム開発目標の第4目標(MDG4)も、進捗の遅れが指摘されています。世界銀行のミレニアム開発目標進捗報告書2011年度版によると、2015年まで残りわずか4年であるにもかかわらず、MDG4の達成率は69%に留まっています。
ワールド・ビジョンの活動
無料で子どもたちの健診、栄養の研修、歯科検診などを行う保健イベント(ボリビア)
ワールド・ビジョンは、世界およそ90カ国でこれまで50年以上にわたり、栄養改善、子どもを対象とした包括的な疾病対策、 HIVに感染した人々や家族へのケア、エイズにより親を失い、弱い立場に置かれた子どもたちへの支援などを通じて、 子どもたちの命と健康を守る活動を行ってきました。 ワールド・ビジョンは、このような活動を地域住民、地方自治体や保健省などの政府機関、医療機関と連携して行っています。
また、「Child Health Now – アクション!救えるはずの命のために」というアドボカシー・キャンペーンを通じて、 貧しい人々が保健医療サービスを受けられることを保障するような国家の保健政策が策定・実施されるよう、 途上国政府に働きかけるとともに、先進国政府に対しても、そのような途上国の取組みを政治的・資金的に支援するよう、 働きかけを行っています。

